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コカ・コーラ東海クラシック 2011

裵相文(ベサンムン)が今季2勝目

今季は初優勝者が8人という戦国時代。その中で、いちはやく年間2勝目に名乗りを上げたのは、やっぱり韓国勢だった。8月に初Vをあげたばかりの裵相文(ベサンムン)が、早くもツアー通算2勝目を達成した。

もっとも、この日一度は絶望の淵をさまよった。「判断力を誤った」と7番の左ラフで3番のユーティリティを握った第2打は、クラブが下をくぐったようなミスショットにあわやOB。左の林から、低い球で脱出した3打目もまた左手前のラフに潜り込み、チャンスホールはパー5でのトラブル続きに、あわやダブルボギーも打とうかという大ピンチだ。
これですっかりリズムを崩した。高山忠洋に単独首位を明け渡したばかりか、そこから痛恨の3連続ボギーで失速した。さらに後半は、11番でまた左。出しただけの2打目は3つかけても寄せきれず、またボギーにして「もうダメだ」と諦めかけた。

その直後はまさに起死回生のイーグルだった。12番のパー5で再逆転の機運を掴んだ。250ヤードの第2打を、右4メートルに乗せて息を吹き返した。さらに15番パー5はアプローチでOKバーディを奪うと、完全によみがえった。

並んで迎えた最終18番は、前で回る高山の3打目を見届けると「パーでいい」と、2打目はセンター狙い。右の手前から池に向かって登って下る。スリル一杯の長いバーディトライも無難に寄せて、最後は1メートルのパーパット。「本当に、すごく緊張していたので」。呪縛から開放されるや2度も3度も、勝利の雄叫びをそこらじゅうに響かせた。

はたちのホストプロのお株も奪った。「この色が似合うと、みんなによく言われるので」と首位から出た最終日に選んだウェアは石川遼も彷彿とさせる。赤ポロシャツに、白パンツ。

大会のテーマカラーもちゃっかりと計算に入れていた。表彰式で主催のコカ・コーラの魚谷雅彦・代表取締役会長に着せかけられた。これまた真っ赤なチャンピオンブレザーは、まるで誂えたようにピッタリだった。
賞金ランクでも、石川と入れ替わった。賞金2400万円は、いよいよ1位に躍り出て、優勝インタビューでも開口一番。「賞金王を狙います」。

それとは対象的に、控えめな昨年の賞金王は、同い年の金庚泰 (キムキョンテ)。しかし、こちらは2008年から2年連続の韓国ツアー賞金王は、言いたいことははっきり言う。今度は日本で王座を狙うと堂々と公言した。だから次週の韓国オープンも出場しないと言った。「今年、私のメインはあくまでもここなので」。母国のナショナルオープンを蹴ってまで、日本に居残るのもそのためだ。

熱狂的なファンも増えた。特に端正な顔立ちと、スラリとした長身の180センチには、女性の声援も多くて、ゴルフ界にも韓流ブームを巻き起こさんかの勢いだ。
勉強中の日本語は、あいかわらず「頑張ります」を、つい「ガンバリマショウ」と、他人事のように言ってしまうが、そんなたどたどしい間違いさえも女性ファンにはたまらない。

今年はもうひとつ、念頭から決めていた。米ツアーへの挑戦。年末に予選会のQスクールの受験を予定しているため、おのずと日本は最後の2戦が出られない。それだけに、なおさら厳しい道のりも承知の上で、改めて繰り返す。「賞金王を狙います。もう1勝、ガンバリマショウ」。
今年、最低でも3勝が目標だと言った。「出来るなら、勝てるだけ勝ちたい」と欲張る25歳は、旅立ちの前に日本にひとつ、大きな置き土産をして発つつもりだ。

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