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三井住友VISA太平洋マスターズ 2011
連覇を狙う、石川遼
初日と2日目は、いきなりその裵(べ)との直接対決に、「切磋琢磨して、お互いに良いプレーが出来れば」と腕ぶす石川に、これ以上ないほど気合が入るエールが届いた。
3日前の夜のことだ。先週の土曜日からコース入りしていた石川は、宿泊先でその電話を取った。
「リヨウ」と、野太い声で呼びかけられて、すぐに分かった。
相手はグレッグ・ノーマン。次週は、アメリカとの対抗戦「プレジデンツカップ」で国際連合のキャプテンをつとめる闘将だ。
「リヨウには、期待している」と、ノーマンは言った。
会場は豪州のロイヤル・メルボルンは、まずグリーン上の戦いが鍵になる、とノーマンは説明しながら「でも、君ならチャンスパットをすべて決められる」と言った。
「自信を持って来い」との言葉に、武者震いが出た。
伝統の一戦は、一昨年に初出場を果たした。前週のコカ・コーラ東海クラシックでツアー通算6勝目を飾って「絶好調で乗り込んだ」。
それにもかかわらず、打ちのめされた。「みな当たり前のようにピンに打っていく」。代表メンバーたちの、ショットの精度に圧倒された。
自分もと意気込むほどに、レベルの違いを痛感させられた。「常に見上げるばかりだった。ついていこうと必死だった」。
当時18歳。
あれから2年を経たいまはこう思う。「同じ目線の高さで戦いたい」。
そのための経験も、実績も、国内外で十分に積んできたという自負がある。
ノーマンの言葉にも後押しされて「自信を持って行きたい」と思えばこそその直前に、ここでぜひ勝って、今季初Vを手土産に、堂々とチームに貢献したい。
そしてそれこそが、賞金王争いのひとつの大きな鍵でもある。現在、2位につける石川と、裵(べ)との賞金差は約6061万。
石川は次週の日本ツアーはお休み。裵(べ)もまた、再来週から最終戦まで2戦を米ツアーのQスクール受験のため、欠場する。
逆転王座のためには、石川は残り3戦のうち1勝することが、最低条件。
今季最後の直接対決で、裵(べ)にプレッシャーをかけるには、ここでの連覇が必須条件といっても過言ではない。
今年で5度目となるここ御殿場で、もっとも印象深い風景のひとつが、「コース管理の方々が、林の中の小道の枯れ葉まで拾い集めて掃除していたこと」と石川は言う。
選手のプレーには直接、影響のないと思われるところにまで行き届いたこまやかなメンテナンス作業は、「ギャラリーのみなさんが歩きやすいように」と、気遣ってのことだと知ったとき、石川の胸も熱くなったものだ。
「すべてにおいて、もっともトーナメントらしいトーナメントのひとつ」と、愛してやまない大会で奇跡を起こせるか。
「これまでの経験をいかしていければ」。そして、次週は堂々と世界舞台に旅立ちたい。