Tournament article

三井住友VISA太平洋マスターズ 2011

連覇は逃したが・・・石川遼が17番で快挙達成

富士山をバックに、快挙達成!! この勢いで、さあ最終ホールもイーグル獲りと意気込んだが・・・
史上3人目のアマチュア優勝を飾った松山さんさえ、羨んだ。「やっぱり、遼のほうが“持ってる”」と、絶賛した。連覇こそ逃したが、今年も富士の裾野を興奮の渦に巻き込んだ。

228ヤードの17番パー3で、石川遼がツアーで自身2度目のホールインワンを達成した。

右からの向かい風に、握ったのは4番アイアン。「良い感触で打てた。あとは、どこに落ちるかのお楽しみ」というティショットはそれどころか手前15メートル辺りから、カップに向かって一直線に転がり込むと、びっくり箱をひらいたような、お祭り騒ぎが待っていた。

誰が喜んだといって、大ギャラリーはもちろんだがいちばん嬉しそうに、そこら中を跳ね回ったのが、石川だった。
真っ赤なキャップをむしり取るようにして、天に向かって振り上げた。そのまま両手を広げて走り回った様子は、ゴールを決めたサッカー選手さながらだった。

同組の近藤や小田孔ばかりか、ギャラリーと言わず、スタッフと言わず、誰かれなしに、石川自らハイタッチをして駆け回る。
今年9月に誕生日を迎え、ついさきごろには交際宣言したばかり。近ごろずいぶん大人びたと評判の20歳が、このときばかりは少年の顔だった。素直な感情を、全身で爆発させた。

17番に来るまでは、首位の松山とは3打差。通算7アンダーは、前日3日目に「14番までに2桁アンダー」との目標にも及ばず「諦めかけていた」。しかし土壇場に奇跡のイーグルで、「まだまだ」と、がぜんやる気になった。

まだチャンスホールの18番パー5が残っている。
「17番でバーディなら、まだ分からないと思っていた。それよりさらに、1個得をしたのだから。もう1回狙ってやろう、と」。

いかんせん、ホールインワンのあとに崩れるパターンは多い。だから、よけいに最後にもうひとつのイーグルを期して、懸命に冷静になろうとつとめた。「おかげで18番は、ここ一番くらいのティショットが出来たのですが」。それだけに、2打目以降がなおさら悔しい。

「フォローの風とアドレナリン。もしかしたら、奥に打ち込むかもしれない」。一瞬、よぎった雑念に「中途半端なスイングになってしまった」と、フェアウェイから177ヤードは8番アイアンで、手前の池に打ち込んだ。

靴下も靴も脱ぎ、次は裸足のウォーターショットに挑んだが、ボールはほとんど水没しており、「水の抵抗がすごくて。フェースが開いて入ってしまった」と、右奥のラフにすっ飛んだ。パーに終わって「お粗末でしたね」と、うなだれた。

ほかにもこの日は4番でも池。今週2個目のダブルボギーも、連覇の邪魔をしたことは否定出来ない。「18番のセカンドそう。体重移動が出来てなかった。ミスも多く、悔しさの残るラウンドでした」。

今回ばかりは同学年のライバルに、主役を譲った。松山さんは、12番のティグラウンドで、地鳴りのような歓声を聞いていた。「遼が入れたな。俺が伸ばさないと、逆転される」。17番の快挙を察知した松山さんを、いっそうやる気にさせてしまった。

「ひとりの選手として、負けたことは悔しい」と、石川は正直に言った。一番のライバルに、勝ちを譲って歯がみしつつも、心は躍る。表彰式で、松山さんと肩を並べてホールインワン賞300万円を受け取った。
これこそが、ジュニアの頃から、ずっと夢見てきたシーンだ。
「同じ歳の子たちと、いつかツアーで優勝争いをする」と、抱き続けてきた思いがいま実現して「これほど嬉しいことはない」。
最終18番の、松山さんのピンそばのイーグルには心が震えた。「英樹は勝つにふさわしいゴルフをしたと思う」。この日の戦況を語り合い、健闘をたたえ合う2人の笑顔が西陽を受けて、いっそう輝く。

15歳で史上最年少優勝を飾り、ツアー通算9勝を上げ、史上最年少の賞金王にも輝いた石川が、その実力をもっとも認める同級生が、いよいよ同じ舞台にのし上がってきた。
新しいスターの誕生を、誰より喜んだのも石川だった。「ジャンボさんたち(青木、中嶋のAON)のように、英樹とひとつの時代を刻んで行きたい」。これからは無二のライバルと、一緒にツアーを引っ張っていく。

  • 第2打を池に入れて果敢な素足の水切りショットも失敗
  • 奥からのアプローチもパーでしのぐので精一杯
  • 連覇を逃したのは悔しいけれど、松山さんと2人きりの表彰式には心躍る
  • ツアーで2度目のホールインワンは賞金300万円に最後は笑顔で締めくくった。

関連記事