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つるやオープンゴルフトーナメント 2011
近藤共弘が3年ぶりのツアー通算5勝目
ツアー通算5勝目も、「勝つのは本当に久しぶりなので。初優勝をしたような、そんな気持ち。嬉しいですね」と4打差の圧勝も、34歳には新鮮だった。
今朝は3時半起床、ホールアウトは太陽も傾く午後5時過ぎ。長い長い週末も、乗りきった。
前日3日目は、雨で5時間32分も競技が中断した。日没間近に再開したもののホールアウト出来ず、翌最終日に4ホールを持ち越した。
しかしこの日は早朝の深い霧で、再開が1時間遅れた。ようやく最終ラウンドに突入したら、今度は雷雨でまたもや2時間25分もプレーが止まった。
やっと再開出来た8番でこの週、初めてのボギーを打った。中断前の3つのリードは露と消えた。この日64の増田と、同じ77年生まれの矢野東に捕まった。「矢野と並んだことは、ボードで知った」。
しかし、近藤の自信は揺らがない。
「不安もなかった。バックナインが勝負と思った」というとおり、後半4つのバーディには根拠があった。
今年、5年ぶりに復活させた米フロリダ州オーランドでのオフ合宿。申し分のない環境で、「朝から晩までゴルフ漬け。あっという間の1ヶ月」。矢野と、星野英正と合わせて3強と呼ばれた専修大時代にも、これほどゴルフにうち込んだことはない。
プロ11年目の昨シーズン。3年前に発症した足底筋膜炎の持病もあって、賞金ランキングは「最低」の43位に落ちた。2000年のデビューから、才能にまかせて4勝を挙げたが、2008年5月の中日クラウンズのあとはふっつりと、勝てなくなった。
石川遼ら、若手の台頭に「近藤ら30代の元気がなくなった」と、言われた。年々高くなるツアーのレベルに「勢いだけじゃ、もう無理」と痛感した。数字が如実にそれを物語った。
復活をかけて、休む間も惜しんでクラブを握った。「おかげで今年はやれるという手応えもつかめて、かなり良いオフが過ごせたと思う」。その確信があったから、久しぶりの優勝争いにも最後まで、泰然と向き合えた。
日々、治療の限りを尽くして、いまは足の痛みもほとんどない。今季はまさに、この開幕2戦目から初めて専属トレーナーを帯同することになり、心技体が揃えば有言実行も難くない。
「良いときも、悪いときも結果にこだわらず、自分をコントロールして、目の前の1打に集中する。難しいけれど、それが今年のテーマ」。
信念を貫き逃げ切った。
「技術的にもメンタル的にも、安定してやれたと思う」と、頷いた。
先週の覇者、高山忠洋も同学年。しばらくおとなしかった30代が、2011年の開幕2戦で大暴れ。ツアーの中核を担うべき年代の復活に、「僕らの世代が盛り上げて、とよく言われるが今はまだ、そういう自信も余裕もまったくない」。謙遜して笑うがこのたびの大震災で、いち早く被災地に義援金を送り、行動に移した一人が近藤だ。
今年の“選手副会長”は「僕らにも何か応援出来ることは」と頭を悩ませ、率先して被災地の復興支援に取り組む。今大会主催のつるやも東北地域の店舗が被災して、「大変な状況にもかかわらず、開催を決断してくださった」と、感謝の気持ちも忘れない。
そしてこの日は大会史上2番目となる、1万4012人もの大ギャラリー。途中、雷の接近に、大勢が避難を強いられ、臨時開放したクラブハウスもすし詰め状態。窮屈な思いも文句のひとつもいわず、気長に再開を待ち続け、最後まで熱い声援を下さった。西日の傾く表彰式も、席を立たずにいてくださった。
「これからもみなさんのお力をお借りしながら、選手一同頑張っていきます。応援よろしくお願いします」。深々と、頭を下げた姿に確かな自覚を感じさせた。