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長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2011
石川遼は「当たって砕けろ!」
この日のフェアウェイキープ率21.43%は最下位の63位というショットの不振を補って、序盤は小技でしのぐ、「耐えるゴルフ」に。
それでも、難解なグリーンと強い風が合わさって、誰もが苦しむ難条件で、4打差の2位タイに踏みとどまった。「踏ん張りどころで踏ん張れた。良いゴルフをしないと上位に行けないコースで上位に残れたのは価値がある」。
これも以前、ジャンボに言われたことだが、「オーガスタは1メートル半の距離が勝負になる」。以来、その距離をいっそう入念に練習するようになった。おかげで、「今週は短い距離を外した覚えがない」と、10番の1メートルも危なげなく、ボギーでとどめることが出来たのだ。
今季初Vとなる節目のツアー通算10勝目を目指す最終日は、金庚泰(キムキョンテ)との最終組。プロ転向後の直接対決は、8戦のうち1勝6敗1分と、数字だけみればどうにも石川の分が悪い。
このデータを元に、「キョンテ選手とは相性が悪いですが」と水を向けられ、眉毛の当たりが微妙に動いた。
「相性が悪い…という言い方は、どうなんでしょうか」。
石川の考え方はこうだ。
「たとえばお互いの技術が同じという状況で、僕がずっと負け続けているのならばそう言ってもいいと思います」。
しかし、石川にとって金は出会ったころから尊敬してやまない存在であり、「もともとすべての面で、キョンテのほうが僕よりずっと優れている」という意識がある。
だからそれも本人には当然で、納得の結果だと言いたいのである。
そして、それだからこそ突破口もある、と石川は考える。
たとえば、以前までの世界ゴルフ選手権アクセンチュアマッチプレーを例に挙げた。
「世界ランク1位のタイガーが、(出場選手中最下位の)64位の選手と当たって思いの外苦戦することがあるように、勝って当然という意識の選手と、当たって砕けろという選手が戦うと、そういうことも起こり得る」。
もちろん、いつも謙虚な金がタイガーと同じように考えるとは、石川もまさか思っていないが「僕の場合は、当たって砕けろに近い思いがある」という。
4打差で逃げる立場と、追いかける立場の心理面の違いも大いに利用したい。
「トップでスタートするよりも、アグレッシブにスタート出来る」。
金もそう語ったように、石川にとっても「キョンテはお互いにお互いを認め、高め合える良いライバル」。相手に不足はない。
「キョンテが崩れることは、期待出来ない。僕は、前半からガンガンに行って、僕らしいゴルフをしたい」。ファンにとっても、胸躍る最終日になりそうだ。