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キヤノンオープン 2011

石川遼は単独首位浮上にも、やっぱり「まだまだ」

さらにスコアを伸ばしていよいよ単独首位に躍り出た2日目も、やっぱり「まだまだ」と言って、納得しない。あいかわらず、反省ばかりが口をつく。

たとえばフェアウェイをキープした9番も、「ティショットを置きにいった」と、セカンド地点まで、浮かない表情で歩いて行った。
連続バーディを奪った15番や16番も、「インパクト後のフォロースルーにスピード感がない」と、自分にダメ出しをし続けた。

週末は、いっそフェアウェイはないものと思って戦う。いや、もちろん「フェアウェイに狙っては、打つのですが」と、照れ笑い。
しかし、たとえラフや林に入れても、もう一喜一憂しない。

「置きに行ってフェアウェイに行くよりも、いいスイングをしてラフに行ったほうが100倍もましなので。そのほうが、堂々とセカンド地点に歩いていける。コース内にボールがあれば、十分かなというくらいの気持ちでティショットを打つ」。

また、落としどころが狭く、昨年は2番アイアンや、3番アイアンを握った4番や12番でも積極的にドライバーで打っていく。「外国人選手が日本ツアーに来たときに言うのは、コースは狭いけど、その分ショットの精度が上がる」と、近ごろ納得ずくの理論にならって、フェアウェイキープ率も度外視で果敢に攻める。

「正直、先週までのドライバーの出来と、自分の気持ちの弱さからすると、今週はぼろぼろになるかもしれないと思ってコース入りをした」という。

「だからいまここにいることが不思議」という感覚は、プロ初優勝時とどこか似ている。2008年のマイナビABCチャンピオンシップは、当時取り組んでいた「スイングで、トップからの切り返しの速さをいかに上げた状態で下ろしてくるか」。ただその一点だけに神経を注いで勝ち取った。

「試合の展開うんぬんよりは、自分がやるべきことをやっていこうと思っていたら、いつの間にか優勝争い。意識したのは最後の3ホールだけだった」と、無心のゴルフについてきた勲章を、いま改めて振り返るにつけて「勝ちたいと、ガツガツしていない今と似ている」という。

先週の大会からいったん自宅に帰ると、後悔と反省が押し寄せてきた。小学生のときに、描いた壮大な夢。「20歳でマスターズ優勝」。確かに、そのための日々の努力や練習だったはずだが「最近は相当な妥協というか、ダレというか。そういうものがあった。甘かった」と、懺悔の気持ちがわいてきた。

「今の自分には、何が一番足りないか」と考えて、石川が導き出したのはやっぱり「練習量」だった。「今年は、もっと練習出来たんじゃないか、という瞬間が今思うと一杯あって。マスターズで勝ちたいと、いうほうがおかしい程度の練習量でした」と、反省した石川はこの日もホールアウト後に、練習場に直行した。

勝てば区切りのツアー通算10勝目は、悲願の今季初V。週末からは「嫌でもスコアや自分の位置が気になると思う」と、予想はつく。
「意識したときに、どれだけ吹っ切れたスイングが出来るかどうか。負けても死ぬわけじゃない。結果がすべてじゃないと言い聞かせてやりたい」。まずは自分との戦いに、全力で挑むつもりだ。

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