Tournament article
フジサンケイクラシック 2011
諸藤将次が、今季もうひとつ目指しているもの
台風さえ切り裂く自慢の飛距離は「高校ぐらいから飛び出した」。そのころから、すでにプロの世界でも「飛ばし屋」で有名だった。最初に名をとどろかせたのは、沖学園高校3年の時だ。
2003年の久光製薬KBCオーガスタ(現・VanaH杯KBCオーガスタ)でアマチュアとして当時、大会史上初の予選通過を果たしたばかりか会場の芥屋GCの18番パー5で、なんと386ヤードを記録。その週のドライビングディスタンスでプロを抑えて堂々1位に輝いた。
すぐにもツアーでやれると評判だった。本人も「アマでやり残したことはない」と、日大を2年で中退した。
しかし、ままならない日々に、飛距離を落として精度を求めた。途端に「飛ばずに曲がった」。真っ直ぐに行かせようとして「少しハーフショット気味に。それでも肩を入れたがる」。そのせいで上体と下半身が連動せずに、散らばったばかりか、30ヤードも飛距離が落ちた。
2008年から2年連続で、出場優先順位を決めるクォリファイングトーナメントでも失敗。「サードで落ちたら次の年は本当にもうやることがない」。完全に稼ぎ場を失って、「練習にも身が入らなくなった」。
悶々とした日々に、華々しい活躍をしたのが同級生だ。諸藤から2年遅れの2008年にプロデビューした池田勇太は翌年から2年連続で4勝を挙げる大活躍。
ジュニア時代からしのぎを削ってきたライバルは、揃ってナショナルチームの常連だった。アマ時代は「東に池田、西に諸藤」と言われたはずが、プロ入り後は雲泥の差に「それはやっぱり、悔しいですよ」。
しかしだからこそ頑張れた。「練習にも身が入った。追いつきたい。同じ場所に立ちたい」。その一心で、練習にトレーニングに励んできた。
キャディの臼井泰仁さんいわく「礼儀正しく、目上に気遣いが出来る選手です」。そんなだから先輩にも好かれる。後輩の祝福に駆けつけた小田孔明がアテストに向かう諸藤に噛んで含めるように何度も言った。
「スコアは他の人にも絶対に確認してもらえ。ここまで来てアテストで絶対に失敗するな。数字は絶対、間違うな」。「うんうん」と何度もうなずきながら、「孔明さんは、ほんとに優しい先輩です」。
昨年のファイナルQTはランク6位で出場権を取り返した今季は、開幕前に同じ福岡出身の飛ばし屋にもさっそく報告をした。
「孔明さん。僕、今年は試合に出れるんです」。
「どんどん言って来いよ」と、小田は言った。その言葉にちゃっかり甘えた。「毎週電話してます」。小田との練習ラウンドは「学ぶところが多い」と、感謝する。
ベテランにも好かれる。
2週前の関西オープンは、練習ラウンドで一緒に回った谷口徹。ツアーきってのショットメーカーには「コントロールショットを習って」。2打目以降の正確性が増した。「曲がり幅が少なくなった」。ピンに絡むショットが格段に増えた。トレーニングの成果もあって、すっかり取り戻した自慢の飛距離が、いっそう生きた。精度の高い豪打が完成した。
「勇太には、まだまだですけど」。それでもようやく一歩近づいた。
「これからステップアップしていきたい。海外にも挑戦したい」と待望の1勝に夢も膨らむ。これからは飛距離にも、いっそうこだわる。ツアーは今季13試合が終了して、ドライビングデスタンスはただひとり、300ヤード超えのランク1位だ。
最大の武器は、二度と捨てない。「維持したい。狙ってます」。
ドライビング王の称号は、譲れない。