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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2012
石川遼は「エネルギーを消耗するラウンド」
「今日は藤田さんのことしか喋っていないな・・・」。
それだけこの日は、賞金ランク1位との直接対決が、強烈だった。
この日を振り返っても、中盤は冷たい風雨の中でのラウンドも、「藤田さんはやっぱり崩れない。ショットが乱れない」。
あの急な悪天候の中でも主役は藤田だった。
「藤田さんは、常に流れの中心にいた」。
石川が特にかなわない、と思ったのは11番。もっとも風雨が強かった8番から連続ボギーを打った藤田は、そこで一瞬、確かに隙を見せたはずだった。
しかし、即座に立て直してきた。
10番で3メートルをしのぐと11番では6メートルのバーディパットで、あっさりと流れを引き戻した。
「僕にも、ハン・リーにも流れを渡さないぞ、という感じで。11番のバーディが、まさにそうでしたね」と、石川は振り返る。
今週は開幕前に、「優勝スコアは12か13アンダー」というプランを石川は立てていた。
しかし、「それをはるか上を行く人がいる」。
藤田は、ただ一人6打差をつけてはるか先を走っている。
「僕の中ではある意味、想定外」。
藤田の強さは安定感とか、小技のうまさとか、手堅いゴルフと言われるが「手堅いプレーというのは、実は非常に難しいんです」と石川は言った。
「それに藤田さんは、手堅いというよりも、攻めている。たとえばグリーンセンターであろうと、狙ったところに向かってしっかりと攻めている。気持ちは全然、守りに入っていない。明日も今日のようなプレーをされたら絶対に勝てない」。
その藤田をせめて視界に捕らえて戦うためにも最終日こそ、最終組の一席を石川も狙っていたが、最終18番ではそのプランさえ、打ち砕かれた。
屈指のパー3は「3番アイアンで、フォローの風に乗せて、ぴったりかなと思っていたのに欲をかいてちょっとでも、飛ばしたいと。それがスイングに出ちゃった」と、グリーン左のラフに外した。
そこから「2メートルに寄せたアプローチは最高でもパットは攻めることが出来ずに、弱気の上がりになってしまった」。
ボギーで“特等席”を逃した。
「今日は藤田さんに、手のひらで踊らされているような感じ。けっこうエネルギーを消耗するラウンドだった」と、目下最強の男に、白旗をあげた。
「藤田さんが一番凄いなと思うのは、妥協しないこと。もっといける、もっとうまくなれると常に考えて、練習でも“このくらいにしておこう”というラインが高い」と、先輩の強さをひとしきり語ったあとで、「そんなこと言ってないで、自分もそれを目指さないといけないですし、そういう姿勢は僕らが持っていなきゃいけない」。
目の前で見せつけられたベテランの強さを糧に、最終日はひとつ前の組で藤田の背中を追いかけていく。