Tournament article

日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills 2012

ツアープレーヤーNO.1 決定戦は歴代覇者が勢揃い!

今年13回大会を迎える『日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills』は今年、11人(2勝2人※)の歴代覇者たちが、久しぶりに顔を揃える。
3回大会の佐藤信人は、昨年の日本オープンで3位に入り、一発逆転のシード復活を果たして、この大舞台に戻ってくる。
また、6回大会の細川和彦と、7回の髙橋竜彦は特別推薦枠で、再び宍戸の森に挑戦する。

髙橋はこの大一番の直前に、今季初戦を迎えた。
先週のダイヤモンドカップは、本戦切符をかけたマンデートーナメントからの挑戦で、出場権を獲得した。今年初の実践で、髙橋が悟ったことがある。

「ゴルフは気持ち。精神的な要素が非常に大きな部分を占めると」。
今大会は、2006年に制覇して、5年シードを獲得したことは、確かに非常に栄誉なことだった。
しかし、そのことが徐々に髙橋を苦しめる結果になったことは、本人も否定しない。

2009年はわずかに3試合。そして2010年は、ついに一度も予選通過出来ないままに終わった。そして昨年は、ついに出場権さえ失った。
苦闘のこの数年間を、「学校に行きたくないのに、行かされている子供のような。やりたくないのに、ゴルフをやらされているような感覚だった」と、振り返る。

特にドライバーで、アドレスしてから手が動かなくなるいわゆる「イップス」の症状にかかっていた。
それでもなまじっか出場権があるだけに、調整も、立て直しも出来ないままに、やっぱりプロとして試合会場には足を運ばなければいけないと思う。その悪循環。

賞金シードは2008年からずっと失ったまま、昨年はついに5年シードの最終年を迎えたことで、精神的な重圧はもはやピークに達していた。

「やらなければという義務感しかなかった。追い詰められて、次こそはと追いかけているときは、他に何も見えない。パニックのような状態だった。体が動かずゴルフになっていなかった」と、振り返る。
「しがみついて、自分のゴルフを見失った」。
シード権や、出場権を守ろうとするほどに、そんな髙橋をあざ笑うように、それらはどんどんと遠ざかっていった。

起死回生をかけたファイナルクォリファイングトーナメントでも予選落ちを喫した。
どん底まで落ちて、逆に髙橋が悟ったのが「ゴルフはそれへの考え方と、距離感が非常に重要だ」ということだった。

失って初めて分かった。
「シード権や、出場権を失うということは、実は思っていたよりも大変なことではなかった」。
プロゴルファーが戦う場所は、ツアーだけじゃない。
「先週のようにマンデーから挑戦したり、出られる場所を探して見つけていく楽しみもあると分かった」。

欲しい欲しい、と飢えているときほど欲しいものは逃げていく。
欲を捨て、いま目の前の一打に打ち込み、その状況を心から楽しんでいるときほどなぜか、不思議とチャンスは舞い込んでくる。

先週のダイヤモンドカップの初日はボギーなしの3アンダーと好スタートを切って、心からゴルフを楽しんでいる自分に気がついた。

このオフはあえて打ち込み練習を避けて、「回りたいときに回る感じで。あまりやらないほうが、むしろゴルフは上手くなるかもしれない」と、笑う。
人生の試練を迎えると、心から自分を支えてくれる人への感謝の気持ちも深くなる。
プロゴルファーで、妻の葉月さん。
いつも陰日向になり、先週は夫のバッグを運んでくれた。
いつも隣で静かに微笑む人の存在は何より心強い。

「楽しむ、といっても気楽にやる、というんじゃなくて。プレッシャーも含めてゴルフを楽しみたい」。今週も笑顔の二人三脚で、宍戸の森を行く。



関連記事