Tournament article
サン・クロレラ クラシック 2012
塚田好宣が首位タイ発進
きっかけは、今週の前日水曜日だ。
友人のプラヤド・マークセンは、人にめったにアドバイスをしない。その彼が、パッティンググリーンでボールを転がしていた塚田に、ツカツカと近寄ってきて、強い口調で言った。
「お前はこのパターを使え」。
ゆびさしたのは、前週に出向いたパターメーカーの新作発表会で、塚田が獲得してきた“戦利品”だった。
余興のパター合戦で、アマチュア相手に“5連続バーディ”を奪い、「これはいい」と、譲り受けてきた変形型のマレットタイプ。
「でも本戦では、いつものピンアンサーを使おうか、と」。
「いいや、お前にはこっちだ」とマークセンは、頑固に言ったばかりか「お前はクロスハンドで行け」と、打ち方まで強制された。
「本当に、彼はめったにアドバイスする人間じゃないんです」。
普段を知るだけに塚田には、マークセンの強い思いが伝わった。
「よほど、見るに見かねたのだ、と」。
現地のゴルフ場のメンバーになるほどのタイ好きは、デビュー当時から好んでアジアンツアーに足を向け、またタイ語まで習得して、タイ選手と積極的にコミュニケーションを取るほどの凝りようも、こうして成績にも直結出来れば、その甲斐は大いにあった。
「小樽は苦手で。いつも、どんなに良いプレーをしたと思っても、予選カットに届かなかった」。
それが、友人のひと声で劇的に変わった。
最終18番は、ティショットを大きく右に曲げて、隣の1番ホールに打ち込んだ。どうにか転がし乗せたが、ピンは2段グリーンの上のはるか彼方に。
「パターで打っても届かない」と、グリーン上で7番アイアンを握る奇策で、1メートルにどうにか寄せた。
「観客が多かったので、緊張しました。アイアンを使っても、寄らなければ“意味ねえ”と叱られそうだし、何よりグリーンを削ってしまったら大変なので」と、どうにかパーを拾って冷や汗をぬぐった。
2009年に自身3度目のシード権を確保しながら翌年からまた、“圏外”続きも「パットが良ければ、常にこのくらいで回れる。結局、ゴルフはパットなんだ。人のアドバイスも、聞いてみるもんだ」と、自身初の初日の首位タイ発進に、タイの友人にも感謝しきりだった。