Tournament article
つるやオープンゴルフトーナメント 2013
21歳の素顔
今も東北福祉大に通う学生プロは、8畳一間の寮生活。阿部監督によると、「気晴らしは寝ることと、ゲームと、趣味のボーリングと、漫画」という。
遠征中も車の運転は、監督に任せて助手席で、読みふける。
「車酔いしないものか」と監督は、気が気ではないが、平然としている。
「普段はビールを1,2杯やればいいほうで、試合中はいっさい飲まない。時間があいてもどこかに遊びに行くわけでもないし、普段はだらだらと過ごすのが、好きみたいだ」と監督。
この2週間で、一気に2714万6000円を稼いだが、貯金通帳に記帳するのも地元の愛媛県にいるご両親の代わりに、保護者役をつとめる監督だ。
「こないだ私が銀行に行ってきたけど、あいつは口座にいくら入っているかなんかに、興味がない」。
賞金で、何かを買いたいというのもない。
「あいつには、物欲というものがないんだ」。
今週は、開幕直前の水曜日のこと。
監督に、松山から電話がかかった。
「どうしましょう、プロアマ戦で勝っちゃいました」。
「どうもこうも・・・本戦で優勝するのが先だろう」と、はっぱをかけた。
「はい、頑張ります」と、一応は素直に答えながらも松山が、本当に困っていたのは賞品でもらった40インチの大型テレビのことだった。
「どうしましょう・・・って俺は知らんよ。自分で考えろ」と監督が言うと、しばらく逡巡ののちに、「大学の寮に送ります」。しかし、自分の部屋に置くには大きすぎるし、みんなが集まる談話室に寄付するといって、送り先も母校にしたという。
今年のつるやオープンは、主催者のご厚意で賞金総額は1000万円増。優勝賞金2400万円と、今年は優勝副賞の車も新たに加わり大金とともに、真っ赤な「マツダアテンザXD Package」も手に入れた。
大学入学に合わせて免許を取得し、いまは中古車に乗っているそうだが、プロアマ戦に続いて豪華副賞の行方は・・・。
「車はどうするかって? まだ分かりません」。
15歳で、史上最年少のツアー優勝を飾ってからというもの、年齢にはそぐわないほどの巧みな話術とそつのない立ち居振る舞いで、日本中の話題をさらってきた石川遼とは対照的に、口べたで、優勝スピーチでも何度も口ごもり、喜びを語るのにも「なんと言っていいのか」と、戸惑う様子がむしろ等身大の21歳を引き立てているようで、それはそれでまた、微笑ましかった。
「あいつは人前で、自分のことを色々しゃべるのが好きではないんだ」と監督が言うように、次の目標を聞かれても「明日考えます」と言うばかりで、多くを語らなかった。
専属トレーナーの金田相範さんも、キャディの進藤大典さんも、口を揃えたのは「でも、胸に秘めた思いは相当熱い」。
男は黙って・・・。大学の先輩の池田勇太もそうだがどことなく、古き良き時代の匂いがする新星だ。