Tournament article
〜全英への道〜ミズノオープン 2013
川岸良兼が「ドキドキしたい!」【インタビュー動画】
ホールアウトした時点では、単独の2位で臨んだ記者会見。「人生最後のインタビュー」と、自虐ネタで笑わせた。「昨日も今日も運だけです。ラフに行っても浅かったり、マウンドに当たってピンに寄ったり。ほんと今日は、俺のためにありがとうございますっていう感じ」と、笑って謙虚に頭を垂れるそばから、「…俺の普段の行いが、いいからだね」としたり顔で、破顔一笑。
主催のミズノを代表するホストプロのひとりだ。しかし、ここで恩返しをといった余計な力みはとっくになくて、「それは若い人に任せて。俺はゴルフを楽しみたい」。
次女の史香さんが、この日は日本女子アマで残念ながら、3日目からのマッチプレーで敗退しても、説教する気もさらさらない。
「だって俺が言ったって、言うこときかない。言えば言うほど反発するから」。21歳。ちょうどそんなお年頃。「もうちょっと、歳を取ったら分かるんだろうけど。やりたいようにやればいい」と、放任主義を決め込む父。
久しぶりの優勝争いは、娘さんも見に来られる? 「いいや、来ないで!」と悲鳴を上げた。実に14年ぶりの、ツアー通算7勝目はもちろん欲いに決まっているが、いかんせんシード権はおろか、出場権さえ失ったままの今は「大きなことを、言える立場ではないので」と、180センチの大きな体を縮こめる。
「それより、もっとゴルフが上手くなりたい」。糸巻きボールと、パーシモンで育ったベテランは、「上から叩いて、低めのフェードで」。柔軟性と、幼少期から培われた強靱な脚力と、そして若さで、「昔は軽く振っても飛んでいた」。しかしそれから、程なくして道具の進化のちょうど過渡期に巻き込まれた川岸は、「馴染めなかった」と新ギアを握っても、頑として古いクラブの打ち方にこわだったまま、対応出来ずにスランプに。
当時は、いわゆるスピンのない「棒球のようなのしか出なくなった」と、振り返る。「今さら言ってもしょうがないけど。あのときに、今の子みたいな高いボールが打てていれば。もっと練習していれば」と、後悔しきりだ。
だが、シニア入りも目前の年齢を迎えたいま、諦めてしまったわけではない。まだ遅くはない。「めくれ上がるような、高いフェードが打ちたい」ともう一度、青春を取り戻す。口では、愚痴や自嘲のオンパレードも、元祖怪物の本音は、「若い子にもまだまだ負けるか!」
「意外とこう見えて、ゴルフのカンはあるんだ。ラフから、フライヤーを計算するとか」。それだけに「たまにはフェアウェイのないコースで試合をやるってどうですか」と、妙な提案。
今季2度目のツアーは「フェアウェイはきれいだし、セッティングが素晴らしくて。失敗しても、言い訳できないのがつらいから」と、妙なぼやきも。
ショットは発展途上でも、経験に裏打ちされた技の数々で、本当に久しぶりの表舞台だ。決勝ラウンドを前に、「また眠れない夜を過ごしたい。ドキドキしたい」と、まるで遠足前の子どもの心境。「だって、最近ちっともドキドキしていないから、つまんなかった」と喜々として、プロ初の予選落ちを喫した松山英樹になりかわり、元祖怪物が大暴れといきたい。