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カシオワールドオープン 2014
平本穏(ひらもとやすき)が大逆転の初シード入り!
「昨日も僕が緊張しないように、お前は大丈夫だと言ってくれた」。同じ広島出身の竹谷佳孝。6つ先輩の労いにも感極まった。
まさに、起死回生の1週間となった。来季の出場優先順位を決めるQTはサードで失敗。今大会が始まる前は出場権もなく、完全に道は閉ざされていた。
ダメ元で会場に来て、直前まで欠員が出るのを待って、出番を得た。最終組で迎えた最終日は首位タイで出て、一時は単独首位にも立って、またとない初Vのチャンスも、前半からひとつ前の片山の組が「わーわーと歓声が凄かったので」。
後半は片山の4連続バーディで、頭一つ抜け出したことを知ったときに、思い出したのはいつか誰かに聞いた話。「あれほどの選手がぱーんと上がってきた時は、その人の日だから。2位とか3位につけているのなら、無理に優勝を狙いに行って、10位とかに落ちるくらいなら、自分は2位や3位を狙いに行くことだよ」。
逃げたのではない。勇気ある「下方修正」も、平本にはもうひとつ、狙いたいものがあった。5位タイ位内なら、上位75人の賞金シード入りの可能性が出て来る。もし漏れても、そこから10人内に入ればファイナルQT進出のチャンスも出てくる。
「優勝は最大の出来事。でも、それよりやっぱりファイナルQTから行きたいとか。あわよくば、ファイナルQTに行かなくてもよくなるとか。そういうのにスイッチを切り替えられても、パーでいいやと思うとですね、もうどんどんパーを獲るのが難しくなって15番も16番も、18番も“ガッツパー”みたいになった」と苦笑した。
最後は12メートルのバーディトライも「いやあ、長かった。最後の試練を思って打った」と、渾身のOKパーに心の底から安堵した。
賞金ランクは68位に食い込み、いわゆる「第二シード」は秋に、出場優先順位の組み替えの対象にはなっても、ファイナルQTには行かなくてもいいし、来季前半戦の出場権は確保できた。
何もかも失った先週までの自分を思えば、まさに土壇場の大ドンデン返しだが、それにあぐらをかくつもりは毛頭ない。
「今年はサード落ちを味わいながら、来年も出られるようになったと嬉しくて泣いて、笑って帰るけれども、来年になっただどうなるか分からない。来年はまた、泣きを見ることになるかもしれない。そういう世界。気を抜かずに今後の良い材料になっている」。
泣いて笑って帰っても、さっそく来季のために、トレーニングに励もうと思っている。「チャンスをもらったので。悔いのないオフの過ごし方を考えたいと思います」。
何はともあれ、来季はシード選手の仲間入り。この機会に覚えてもらおう。平本穏、28歳。「やすき」の「穏」は、穏便の「穏」。間違っても「隠れる」の「隠」ではありませんのであしからず。