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日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 2016

ツアー通算16勝、2度の賞金王の伊澤利光が「ゴルフの楽しさがやっと分かった」

かつてはツアーきってのスインガーと呼ばれ、米メジャー制覇も夢ではないと言われ、若手ベテラン問わず“同業者”たちからも熱烈コールを浴びるほどの実力者であった。ボールを巧みに操る技は、天才と呼んでもさしつかえなかった。

その伊澤が「ゴルフはもういいよ・・・」と、引退とも取れる言葉を残してツアーの世界から姿を消してから、3年と8ヶ月。
その間はもっぱらレッスン業で生計を立ててきた伊澤が、再び表舞台に戻る決心をした。

「ゴルフの楽しさが分かったから」という。

100を切りたい。
シングルになりたい。
そして何より、もっとゴルフが上手くなりたいと、伊澤のもとに集まってくるアマチュアのみなさんと、一緒に悩んだりするうちに気がついた。
「ゴルフとはそういうものか、と」。

才能に任せて勝ち星を重ね、01年のマスターズでは当時、日本勢最高の4位につけたが、伊澤が本心から満たされることはなかった。
「前は、良いスコアで回るためだけの練習をしていたからだと思う」。
結果ありきのゴルフを続けるうちに、目的を見失った。

「でもゴルフって、実はそうじゃないんだと。1ホール1ホール、攻略していくためだとか、もっと上手くなるための練習だとか。それがゴルフの本当の面白さなんだと分かって。そうしたら、前よりゴルフが楽しくなった」と一度は頂点を極めたベテランが、手始めとして今年はなんと、チャレンジトーナメントで“復帰戦”を迎えていた。

6月の「LANDIC CHALLENGE 2016 DEUX・RESIA MANSION GOLF TOURNAMENT」は、住まいのある福岡の芥屋ゴルフ倶楽部で若手に混じって奮闘した。
予選落ちを喫しても「内容は悪くない」と、伊澤は明るかった。

「今はまだ週2、3回200球くらい打つだけで練習も足りてないし、今の自分でどれだけ出来るか。様子をみているところだから」と、かつての栄光にこだわったり、すがる様子もまるでない。

出場権のない大会でも主催者に、むやみに推薦出場を取り付ける形ではなく「マンデーからでも出るつもり」と、レギュラーツアーでは出来るだけ、自力で復活の道を模索するつもり。

このプロ日本一決定戦は2007年の優勝時に得た大会の10年シードを糧に、再出発を決めた。
「今までに作り上げたものはあるけれど。それをいったん崩して、ゼロからまた積み上げていくつもり」と、48歳がまさに新人の心境で帰ってきた。

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