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RIZAP KBCオーガスタゴルフトーナメント 2018
出水田大二郎のツアー初優勝に泣き崩れる人続出
「・・・なんで先輩が泣いてるんスか?!」。
出水田の地元鹿児島・樟南高校の寮で共に1年を過ごした。秋吉翔太。2つ歳上のルームメイトだ。祝福に来てくれたはずが、なぜか自分が号泣している。
「僕もウルっと来たのですが。先輩が泣いているので引っ込んだ。そっちが泣くんだ、みたいな」と、なんとも可愛らしい秋吉の様子に自身は泣くより笑ってしまった。@勝者の儀式@特別映像@jgto 飲料を手に集まった大勢の仲間たちも微笑ましいシーンをしばらく遠巻きにして、みな笑っていた。
目を真っ赤にした秋吉と肩を組み、その輪の中に飛び込んでいった。
「翔太さんは高校時代から世話になり、いつも気に掛けてくれる先輩。嬉しかった」。
2人一緒に浴びた水シャワーは格別だった。
「翔太さんに負けないようにと今年、刺激になっていた」。
プロ8年目の出水田が今季、秋吉の2勝に遅れを取らずに初優勝を飾った。
初の最終日最終組を、ボギーなしの3アンダーで折り返して一時は3打差つけても試練はやっぱりやってきた。14、16番でボギー。そこで見上げた速報板で崔虎星(チェホソン)と並んだと知った。
旧知の出水田を評して先輩の秋吉はいう。「大二郎は飛ぶし、ショットはいいのにボギーを打ったらすぐにガクっとマイナス思考になる」。
父親の勇光さんも「優しすぎる性格で、本当にプロに向くのか」ずっと息子が心配だった。
今年もまたここから崩れ去るのか。
本人も「メンタルは、弱いほう。考えすぎて空回り」。
昨年大会は、3日目の最終組に「体が動かず自分のゴルフが出来なかった」。15位タイに終わっていた。
V争いの免疫をつけて、再び初優勝に挑んだ今年。
出水田がスタート前に流す「勝ちウタ」に選んだのはWANIMA(ワニマ)の「シグナル」。アップテンポのリズムと合わせて「前向きになれる歌詞」に毎日、自分を重ねて口ずさみながらコースに出た。
「調子も上がって来ていたし、結果を残すならこの大会だ、と。自分への期待もあった」。今年こそ、好機のサインを見逃さなかった。
終盤の窮地も「最後にパー5があるし、残りホールもまだある」と冷静に思えた。
17番パー3で5メートルに乗せてバーディ。
再び1つリードで迎えられた18番は「無理する必要がなくなった」と、右のラフから丁寧に刻んだ。
3打で乗せて、2パットのパーパットがこの日、一番シビれた。
「最後、1メートルのウィニングパットでいきなり震えが来た」。
最後に最後の重圧を打ち破ると、歓喜の瞬間は訪れた。
「最終日に大二郎に圧をかける」と言っていた。先輩・秋吉の付けいる隙も与えないまま逃げ切った。
鮮魚店を営む父・勇光さんは学生時代に、競泳で全国レベルを誇った。
でも「僕はゴルフのほうがいい」と言い張る息子。小4から本格的に打ち込んだ。
横峯さくらさんの父・良郎さんが鹿児島で開いた「めだかクラブ」に入塾。
腕を磨いて2008年から九州ジュニアで3連覇を達成すると、19歳の2012年にプロ転向。
同年、飛距離を生かして参戦わずか2戦目の「きみさらずGL・GMAチャレンジ」でいきなりプロ初Vを飾るもその後、伸び悩んだのは自業自得だ。
「優勝して、調子に乗った」。独り暮らしを始めた宮崎で「親のすねをかじって遊びほうけた」。
両親に呼び戻されて、実家に戻ったのは4年前。
チャレンジツアー(現・AbemaTVツアー)からの出直しを誓った昨年には秋吉もいる地元九州一派の“チーム孔明”の一員になった。
「賞金王を獲られた方ですし、孔明さんの背中を追ってやってきたのが良かった」。
シード元年の初Vを成功させた。
今週、自身は予選落ちをしながら土曜日にもまたコースに来て励ましてくれた孔明にも、結果で報いることが出来た。
ハンカチで歓喜の涙を押さえた母・とも子さんの肩を優しく抱きながら「一番に恩を返さないといけない人。少しは親孝行が出来たかな」。
この日、とも子さんが応援に履いてきた靴も今年、開幕前に出水田が贈ったものだ。
毎年、欠かさない誕生日のプレゼント。
遠征先からたびたび実家に送り届ける各地の名産品。
今までのどの品よりも勝る、とっておきの恩返しを実現させて、両親の前で誓った。
「目標は2年後の東京。そのためにもまぐれの1勝で終わらないよう、ここからまたスタートと思って頑張っていく」。
恩返しも孝行もまだまだこれから。うれし涙も1回きりでは終わらせない。
@いずみだ@でみずだ@どっちどっち@名前覚えて@jgto