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ダンロップ・スリクソン福島オープン 2018
石川遼は逆転負けも、東北で選手会長の夢を語る
山岡と首位で並んで出た最終日もやっとスコアを動かしたのは後半の12番。そこから3連続バーディも、スコアを縮められたのはその3ホールだけだった。
ボギーはないが、前日初日の10バーディとは対照的な静かなゴルフでは、秋吉の追撃をかわせなかった。
特に前半は、ことごとくチャンスが決められない。
「何かがおかしい。振り返ると5回くらい、全部カップの左に外れている」。
やっと気づいたのは7番のグリーンだった。
次の8番で、自分は真っ直ぐと読んだ2メートルのパーパットを打つ前に、佐藤賢和キャディに聞いてみた。
「カップの右端だよ」と、間違いを指摘されたという。
言葉を信じて打ったら、その通りに入ってパーを拾えた。
そこでようやく「最初から、ラインを左に取っていたんだ」と分かったという。
最終日のバーディ戦に乗っていけなかったのは序盤、パターのライン取りを間違えていたためだった。
「気づくのに、7ホールかかったが自分の修正能力次第では、もっと悪くなって、もっと下の順位で終わっていた可能性もある」。
2戦連続予選落ちからの3打差3位タイもプラスにとらえた。
課題のショットに関してもドライバーも含めて特に長いクラブで「スピンが入った球が打てるようになっている。自分の距離だと2、3番アイアンで、止まる球が打てれば世界でも戦える。今年の中では一番、充実した内容」。
惜敗の中にも収穫を見つけて前を向けた。
東北で唯一の大会で今年、初出場にこぎつけ感じたことは、より大勢のファンに実際に戦うプロの生の姿を持てもらうことの意義だ。
本人から聞いた話として「大会が出来たころに、勇太さんが出場したら“本当にガニ股だよ”というファンの声が聞こえたらしい」という逸話を明かして「僕もどこに行っても“思ったより小さい”とか“細い”とか言われるけどそれって普段からテレビで見ていてくださるからこそ出てくる言葉で、非常に嬉しい」。
そんな感動の声を、全国各地でもっと聞きたい。
「全国でツアーをやりたい。47都道府県とまでは言いませんがそれに近い感じで試合があれば。青森や秋田などテレビだけでしかプロを見たことがないという県がまだあると思う。やっと来たかと地元の方に思ってもらえるようなトーナメントを増やしたい」。
初めての福島に、勝利で報いることは出来なかったが、選手会長としての夢と目標は膨らんだ。
東北のみなさんとの再会への願いをこめて、ハイタッチや延々と続く長蛇のサインに応えて歩いた。