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長嶋茂雄INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2019

逃げる立場の葛藤を吐露。石川遼が挑む2戦連続V

自身初の2試合連続Vに王手をかけた。2打差の単独首位から出た3日目の第3ラウンドは、スタートの1番で2メートルを沈めると、5番ではピンそばのバーディ。一時は4差つけた。
快調に下位を突き放して快走しながら石川遼は「今日は難しい1日だった」と吐露した。

後続と差があくほどに、気持ちの持ちように苦しんでいた。
「首位からのスタートは、居心地がよくない。トップに立つときのメンタルに、慣れるということはない」。
通算15勝であらゆるV争いを経験してきたはずだが「2位と少し差があってのスタートは、たくさんはない。久しぶりの感覚。緊張してやりにくかった」という。

独走しているからこそ攻めあぐねていた。
11番、13番では池。
でも11番では打ち直しの3打目をピンに絡めてパーを死守した。
フェアウェイから250ヤードの2打目を2Iで手前の池に入れた13番は、後方にドロップして70ヤードの4打目を、SWでピン1メートルにくっつけた。いずれのピンチも打ち直しのべたピンで、見事にボギーを避けたが「リードしているならティショットを池に入れないというのが鉄則。でもそういう技術を僕は持ち合わせていない。自分で流れを悪いほうにいかせてしまった。1日中、どんよりとした気持ちだった」という。

今年から、ワンオンのチャレンジホールに生まれ変わった17番パー4は282ヤード。
「3Wなら、150%のショットを打たないといけない距離。でも1Wで打つと普段のショットが大きいとわかった上での1打になる。最終日で追いかける立場なら5(ボギー)になっても仕方ないから2(イーグル)に賭けるというのはわかるが、3日目のあの状況で、それをどう加減していくか」。

逡巡の末に結局、好調のアイアンを頼りに刻んで2打目勝負のバーディは獲れたが「あの攻めでよかったか。今でもモヤっとしている」。
ボギーなしの67で回り切っても気持ちは最後まで晴れなかった。

3打差の単独首位で、最終日もまた逃げる立場に「逃げても、追いかける立場でも世界は何も変わらないのに。自分の中で、いきなりドラマが始まっちゃうからやりにくい。明日はどうなるのか」。

不安げに言ったが過去15勝で石川が、単独首位から出たのは11試合でうち8勝。さらにそのうち2打差以上でスタートしたのは6試合で、勝率は100%。逃げ切りVは、得意なはずなのだ。

先月の日本プロで3年ぶりの復活優勝をあげたが、まだ自信に至っていない。
「たとえばジャンボさんがこの状況でトップにいたら、”追いつくのは難しいな”と他の選手は思うはずですけど“遼だったらチャンスはある”と思われていると思う。少しずつイメージを変えていかないと。明日はそういう意味で、自分を成長させてくれる1日になる」。

最終日はリーダーの葛藤と共に、7週ぶりに開けた男子ゴルフで2試合連続Vというプレッシャーも加わるが、2014年大会では優勝の経験も。
あのとき記念の10回大会では会場で、優勝杯を手渡してくださったミスター。
15回目の今年は、昨年に続いてご自宅でのテレビ観戦を決められたそうだ。
大会の冠をつとめる長嶋茂雄氏をうならせる、鮮やかな逃げ切りVで感謝の気持ちを伝えたい。
「誰にも追いつけない存在の方。長嶋さんに凄いと思っていただくのは難しいことですが、少しでもいいプレーが見せられるよう。挑戦者の気持ちで頑張る」。
逃げる展開でも、気持ちで逃げない。

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