Tournament article
〜全英への道〜ミズノオープンatザ・ロイヤル ゴルフクラブ 2019
小平と大槻。対照的な2人のライバル関係
先日、その中嶋が「勝負に勝つのはもちろん、俺たちは"彼にも負けない"という気持ちでやってきたが、今の時代は流行らない」と、言った。
確かに、今の選手たちはよく「相手は関係ない」とか「自分との戦い」といった言葉を口にするが、それは出来るだけ他人との衝突を避けて、周囲の空気を読むことに全力を注ぐ、今の時代の特徴でもあるのだろう。
その中にあって日本ツアー7勝、米1勝の小平智は稀有な存在であるかもしれない。いわゆる、ゆとり世代とも呼ばれる平成元年生まれだが、「子どものころから試合で友達と勝負することが楽しかった」と言い、今でも遠慮なく相手への対抗心を口にする。
ジュニア時代からの同期プロも何人かいるが、先週の関西オープンでツアー初優勝を飾った大槻智春も、そのうちの一人。
その週、参戦中の米ツアーからたまたま一時帰国していた小平は、日大同期の悲願達成を心から喜び「僕にも刺激になる」と言いながらも、今週の「ミズノオープン」で久々に再会すると、「あえて厳しいことも言う。1勝だけじゃまだまだ僕には追いつけない!」。
学生時代から、互いの家を行き来してきた親友にも面と向かって辛口エールを贈るのである。
互いの父親同士とも親交がある2人。
大槻は、「サトシのオヤジさんがうらやましかった」と、V会見時に打ち明けた。大槻の父・隆さんは、ご本人も自認する「スパルタ」。ジュニアの大会で、息子が試合に負ければ「辞めさせる」と怒鳴り、試合後に1000球の特打ちを強制することも。
「逆らえないくらいに怖かった」と、今も当時を思い出しておびえる大槻に対して小平は、元レッスンプロの父・健一さんに「成績で叱られたことはなかった」という。
「僕はゴルフが好きで、親にやらされている感覚はなかった。もし厳しく言われていたとしたら、オヤジのためにやってんじゃねえよ、って。オヤジもそういう僕の性格をわかって優しく教えてくれたと思うし、確かに智春のオヤジさんは、厳しかったですけど入れ替わっていたら、お互いにこうなってなかったんじゃないか…。智春は、ドMなんですかね?」と、冗談を交えながら「智春は、オヤジさんが厳しかったから成長できた」。
ゴルフを学んだ環境は、対照的であるようだ。
初優勝に沸いた翌週は、さっそく互いに初の同組対決が実現した。
今週の「ミズノオープン」は、大槻の地元・茨城県での開催。
開催コースの「ザ・ロイヤルゴルフクラブ」は、自宅のある神栖市から車で約30分の立地で「応援も多いと思うけど、みんなサトシのゴルフを見に来るんじゃないですか。日本ツアーでは珍しいから」と、おどけた大槻。
「サトシのほうが、成績も技術も僕より上。サトシほど勝利を重ねていれば、自分ももっと気持ちや欲を出してもいいが、1勝目は転がりこんできたようなもの。自分は相手どうこうよりも、また上に行けるように自分のゴルフをやっていけばいいかな」。
言動も対照的な2人が大会初日は共に、7時30分から8000ヤード超の最長コースに出ていった。