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パナソニックオープンゴルフチャンピオンシップ 2019
石川遼がコースレコードタイの62で急上昇
550ヤードの18番パー5。池越えの2打目はフェアウェイからピンまで226ヤード。
4Iで1メートルに着弾させたボールは、ほとんど微動だにしなかった。
ドっと沸いた。手を挙げて大歓声に応える姿は確信に満ちていた。
「4Iで、ちょっとでも薄く入ったり、ドローがかからなかったら届かない。完璧に打って、やっとぴったりのクラブ」。
リスクを承知で「挑戦者の気持ちで打ちたいなと思った」。
ドッグレッグの多いコースでアイアンでの刻みに徹したものの、攻めあぐねて1オーバーの73位と出遅れた初日。
昨日の自分に打ち克った。
「すごく嬉しかった」。
劇的イーグル締めのガッツポーズに満足感が漂った。
出だしの1番は5Iで、ピンそばのバーディ発進。
12番では3Iで、1.5メートルのイーグルチャンスにつけた。
「アイアンの内容が今日、すごく良くて。5、60ヤードから”入れ”というのが今日は2回くらいあった」。
前日初日は72を打ち、ドライバーを持たないもどかしさに「モヤモヤ」は残っても、多くホールでアイアンで刻む戦略は変えなかった。
かわりに繰り返したのがプレー後の徹底した復習と反省だ。
報道陣の質問に答えながら、またはトレーナーさんのケアを受けながら、もちろん帰りの車中でも。
「練習場で打つだけが、復習ではない。1打1打を振り返り、何がいけなかったか深掘りしていく」。
頭中で取りまとめた課題を、部屋に帰って黙々と書き出した。
小学時代はただ、その日のスコアや「楽しかった」と、無邪気な感想を書くのみだった”ゴルフノート”。
一度、中断していたが、米ツアー撤退からの復活を期した昨年からまた始めた。
「復習して、予習をして次の日に生かすのは、学校の勉強でも同じこと」。
初日の葛藤を一夜ですっきり整理して、すがすがしい気持ちでコースに出た。
今季海外初戦の「SMBCシンガポールオープン」で「衝撃を受けた」という世界レベルのアイアンショット。初日に同組で回った米10勝のガルシアは「僕が5メートルにつけるところを、全部その半分内につけてきた。バーディチャンスの差を足したら、いったい何差になるのか」。
以来、追い求めてきた理想の精度。
「自分にプレッシャーをかけてやってきた」という試行錯誤が、この日の猛チャージに集約された。
初日は、予選通過も厳しい位置から一転、僅差のV争い。
08年に、初めて東広野を回った大会では、予選落ちを喫した。
「ここで、まさか予選を通れるとは」。
あれからちょうど12年後の快進撃に、おどけて謙遜しながら「明日から楽しみ」。
目下、賞金1位が今季3勝目をあっという間に射程にした。