大槻智春が、手をかけた。
5メートルのチャンスを沈めた2番のイーグルを皮切りに、6バーディと、1ボギーは単独首位で迎えた最後18番だ。
右ラフから打った2打目は、視界の右端に立っていた細い木の枝をカコーン、と命中。
あらぬ方向へ。
同組の宮本勝昌も感心した沈着ぶりも「出さないだけで、めちゃくちゃ動揺している」と、鉄のポーカーフェイスの目が泳いだのは、「一瞬、どこに飛んだかわからず焦ったから」。
距離は稼げなくても、左真横のラフに残っていたのは命拾いだった。
3打目は目の前の木が邪魔をして、まっすぐピンは狙えなかったがグリーンを捕らえることはできた。
2パットのボギーで宮本と、アマチュアの蟬川さんと並んで首位に踏みとどまれた。
先週の「ANAオープン」で、石川遼とのプレーオフの2打目を直接入れる劇的2勝目まで3年の月日を要したが、3勝目の大チャンスはすぐ来た。
今年は、「アジアパシフィック ダイヤモンドカップ」→「ゴルフパートナー PRO-AM トーナメント」の今平周吾の例が新しい。
それ以前なら、谷原秀人が「長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップ」→「日本プロゴルフ選手権大会」で達成した2016年までさかのぼる。
2週連続優勝は言うまでもなく、心技体を備えた真の強者の証し。
「そんな……僕なんか。ほんと全然、ぜんぜんなんです」と、いつものように首を振り、2週続きのV争いを「疲労困憊のランナーさんみたい」と、表現。
ゴールを切るまで懸命に足を動かしひた走る。