首位とは10打差の27位タイから出たこの日。
1番ティのVIP席から切実な声が聞えた。
「タイガーチャージ、お願いします!」。
主催者のみなさんのただならぬ期待を感じて「はいー…」と、思わず苦笑いをこぼした。
「僕もそれを狙っているんですが、なかなか上手くいかないです」と、答えた途端に「ゴルフってのはそういうもんだよ」と、JGTO会長の青木功。
「本当にそうですね」と、痛感しながらプロ初戦の最終ラウンドをスタートさせた。
序盤こそ2番、4番、7番と順調にバーディを重ねたが、9番で痛恨のボギーを叩いて躓いた。
フェアウェイから「ひっかかった」と、なんでもない2打目を左にミスして首をうなだれ、クラブをだらりと垂らして動揺する場面も。
「良い流れでバーディ来たかな、と思ったところでもったいないボギーが来て、そこからなかなか立て直せなかった」と後半最初の10番でもセカンドのミスが続くなど、思うように伸ばせなかった。
鬱憤の4日間。
せめて最後の見せ場は18番だった。
視界左に捉えたフェアウェイ中央に立つ木を避けて、右から回した2打目は池きわの手前カラーに着弾。
渾身のイーグルトライは、「この1打で何十万、何百万円変わってくんのやな…と、思いながら打ちました」と、プロの自覚を剥き出したが、惜しくも逃してバーディ締め。
「入れたかった…」と、悔しがった。
初日も、2オーバーの70位タイと出遅れたが「このまま予選を落ちたら今週かかった経費も、キャディさんのお金も、食事代もゼロになる」と、執念の予選通過で週末こそ上昇を誓ったが、「期待をされている中で、こういう結果になってしまってとても悔しい気持ちです」。
初任給82万2000円にも、プロの厳しい現実を見られた。
9月の「パナソニックオープン」から数えて史上6人目の出場3連勝はならなかったが、自宅から車でわずか20分で来られる今大会は4歳で初観戦、また昨年大会では自身初のベストアマを獲得した思い入れのある試合である。
さらに小学時代の2009年にはレッスン会で、石川遼に指導を受けるあどけない姿が朝日放送の映像に残っており、21歳のいま、ここでプロデビューを迎えることができたというのは非常に感慨深い。
「悔いが残るプレーでしたが、たくさんのみなさんの応援を受けて回れたのはとても楽しかったです」と、地元の大応援団に改めて感謝し、「勝ちたかったですけど、フルスイングじゃない距離を調整して打つ時の距離感や、今週は3パットを10回(外からパターを使ったホールを含む)もしましたし、課題を見つけられたのは良かった」と前を向き、「これだけ課題がある中でもこの順位で終われたならもっと上に行けるかな…?」。
今後の伸びしろを自覚できたのも大収穫だ。
「これからももっと魅せるプレーを目指して頑張ります」とテレビカメラの前で宣言し「これからも応援宜しくお願いします」と、深々と頭を下げると、今度はにこやかに長打の列の前に立ち、延々と一人残らずサインを続けた。