初日の44位から、首位タイへの大ジャンプも「普通に予選通過ができたらいいな、と思っていたくらいで。予感もまったくなかった。ほんとに、予選通過ができたら、と…」。
まったく無欲の猛追だった。
9月の「ANAオープン」で、石川遼とのプレーオフを2打目をカップインするイーグルで制して3年ぶりの2勝目をつかみ取ったがその後「パターで試行錯誤」。
10月の試合はどれも20ー40位台をうろうろしていたのに、突如としてスコアに恵まれると逆に戸惑う。
「明日からのことを考えるとあんまり、前向きなことは言えないですね…」と、長髪をサムライみたいに結った頭を申し訳なさそうにかしげた。
この2日間でただひとつ、思い当たることがあるとすれば、10月の「バンテリン東海クラシック」の3日目以来となる今季2度目の同組になった日大同期の存在だ。
「僕は普段、プレー中にあまり話しとかはしないんですが、サトシはいつも向こうから話しかけてきてくれて、それでリラックスして回れた」と、この日は2人仲良く黒の基調ウェアで揃えた小平智(こだいら・さとし)とのラウンドトークも弾んだ。
2018年に米1勝を挙げて、今なお異国で孤軍奮闘を続ける小平の存在が、大槻にも大きな励みだ。
「週末にまた一緒に回れたらいいね」とV争いを約束して、通算6アンダーの6位タイにつけた小平といったん離れた。
「週末は僕がトモハルに追いつけるように頑張る」(小平)と、土曜日はまず自分が、尊敬する親友の指標になる。
今大会は、コロナ禍の2020年に首位で出ながら最終日に「71」と伸ばせず、金谷拓実(かなや・たくみ)と石坂友宏(いしざか・ともひろ)による、学生プロ(当時)同士のプレーオフ対決に混じれなかった。
「もちろん、当時の悔しさはあります」と、32歳のサムライは静かに燃える。