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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2022

王者は1日にしてならず。戴冠の今季、比嘉一貴が日々重ねてきたルーティンを追ってみました

出場わずか30人のシーズン最終戦が開幕した。
初日は、賞金ランキング順に組まれる。
現在賞金ランクトップ3が、最終組でコースに出た。



星野と堀川ら、賞金2位以降の確定はまだ今週の結果次第だが、賞金1位はもはや動きようがない。 賞金ランキング

今大会前に、賞金王が決定したのは、2015年の金庚泰(キム・キョンテ)以来7年ぶりである。

比嘉一貴(ひが・かずき)は、すでに戴冠を決めて入った初日の朝も変わらずスタート前から汗びちょだった。


賞金王の朝は、まずトレーニングから始まる。
近くで買ってきた朝食を軽く済ませてツアー専属のトレーニングカー「プレジャー」に駆け込むと、「名前は分からないけどいろいろやります」という各種メニューはスタート前の準備体操、という生やさしいものではない。

成瀬克弘JGTOトレーナーの施術も含めてたっぷり1時間半。
最後、瞬発力を高める天井ジャンプで締めた頃には、手で膝をつき、息も絶え絶えだった。


賞金王の天井ジャンプ。あと数センチで到達だよ~。成瀬さんのプレジャーならぬプレッシャー。なんちゃって


この日はぐっと冷え込み、ゴルフウェアに着替えて外に出ると、体が余計にきゅっと締まる。
「汗で濡れているから余計に寒い」と、身を縮めたが、この時点でスタート約40分前。

「スイングはもう分かっているし、これだけやって、体も暖まっているから、そんなに打ち込まなくても大丈夫」と、もう仕上がっている。


練習場ではこの日10時30分のスタートまで、ウェッジ59度→55度→51度→PW→8I→6I→4U→7W→5W→DRの順に調整。

4年連続4度目の出場を果たした今大会は、「今まで持ち球のドローで攻めてきた」という。

しかし会場の東京よみうりは、フェード向きのコースといわれる。
「今年はフェードが打てるようになったので、ティショットが今までより上手く打てている」と、手応えを話し、朝練もDRで納得のいくフェードが打てたところで「○」と、打ち切り。

再び59度のウェッジに戻して今度は51度→9I→7I→5Iで整え打撃練習を終えた。



球数は約60個ほど。
少ない量で効率よく準備完了できる秘密は、計測器のトラックマンにもある。
その日の風や気温、湿度によって、微妙に変化する飛距離もそれで一目瞭然で、コースでの計算も立てやすくなる。
得意のコントロールショットも、狙いどおりに打てているかがチェックできる。


最新機器も駆使した打撃練習を終えると最後の15分を活用してパッティンググリーンへ。

普段31インチのパターを使うが、連戦で知らずに前屈みになったり、打ち急いだりする。その防止に、最初38インチと長めの練習用パターで姿勢やリズムを整えてから、本パターで何球か転がすと時間がやってきた。


先週までと、何も変わらない賞金王のルーティンだ。


今季4勝目を飾った「ダンロップフェニックス」では、ついに4日間ともプレー後は、ショット練習をしなかったと明かした。

プロ6年目。
2019年のフル参戦以降でいうなら「今年が一番練習していない」と話す。

「やみくもに打たなくても、これだけやればいいというのが分かっているので、練習しなくても大丈夫」と、今年は特に終盤戦でも、まだスタミナに余力を残している。

がむしゃらに球を打つ替わりに、身体調整に注力してきた成果でもある。


この日のプレー後もまた、いつものように、上がったその足で、すぐに移動式トレーニングカーのプレジャーへ向かうだろう。

成瀬トレーナーに施術を受けながら、その日出たショットの傾向やミスを話すと、すぐに体の使い癖や、原因解決の答えが返ってくる。

比嘉に限らず、賞金2位の星野陸也をはじめ、多くの選手が頼りにする駆け込み寺の「成瀬塾」。


成瀬JGTO専属トレーナーにも感謝の1年でした 


昨年から導入された「コスモヘルス株式会社」の椅子型の電位・超短波治療器は、あまりの居心地の良さに、施術中にうたた寝してしまうことも。


効果に惚れ込んだ比嘉はこの秋、自分と奥さまのご両親用にと、同機種を2台も自費で購入。転戦中はポータブル版をレンタルし、タイマーで起動しながら朝までぐっくり。
翌朝もまた元気に戦える。
ツアー最小の賞金王が黙々と続けてきたこの1年のルーティンは、ただひたすら実直に重ねてきた努力のほんの一端でもある。

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