「出産したばかりだと、せっかくの休みも私は悠人になんにもしてあげられなかったと思います。本当に凄く助けてもらいました」と、絢香さんは改めて感謝する。
遠征から帰ったら帰ったで、今度は絢香さんが頼まなくとも、試合がない日は5月末に生まれたばかりの長女・悠香(ゆうか)ちゃんのおむつを替えたり、お風呂に入れてくれたり「ほんとうにお世辞じゃなく、めちゃくちゃいいパパなんです。ね~~~」と、お母さんに相づちを求められて「ね~~~~~!」と、お兄ちゃんの悠人くんも嬉しそうに頷いた。
今季は、絢香さんにも、悠人くんにも見慣れない父親の姿がひんぱんに見られた。
選手会長に就任し、「どこに行くにもあんまり身なりに構わずジャージとかだったのが、今年は毎日、慣れないスーツを着て、靴ひもの固いレザーのシューズを履いて」(絢香さん)。
多忙を極めた。
谷原は、「選手の意見、思いがあるし、僕個人の思いもある。一丸とならないと、動かせない部分があって、今後の男子ツアーをどう思っているのか、どうしていきたいか、意見をくみ取りながら上げているが、なかなかうまく行かない部分もある。その辺は苦労している」などと葛藤を明かすが、その中にあって、若い選手がいま、確実に育っていることが、選手会長としても頼もしい。
また今大会の出場選手は10代が1人、20代が17人、30代9人と、自身も含めて40代が3人。
「これだけ幅広い年齢が、同じ舞台で戦えるスポーツはなかなかない。大混戦になって、楽しんでいただけたのじゃないか」とその中で、自らゲームを引っ張れたことが谷原には嬉しい。
「若手、中堅、ベテランが上手く優勝して、自分にもできるという若手がまたどんどん出てくることも楽しみです」と、来季以降の展望を語ると共に、「僕もまだまだ壁になる」と、対抗するのはもちろんだ。
「出会った20代のころの彼は、若さだけというところがありましたけど、今が一番まじめなんじゃないでしょうか」と、妻の絢香さん。
「日曜日に帰ってきて、月曜日は必ずトレーニング。試合中も3時間前に起きてトレーニングをしてから出る。ただゴルフの向上のためだけに時間を過ごしている。そういう彼を凄く尊敬していますし、そういう彼を私は応援し続けるし、この先どうなろうと、これだけ努力をしてきて彼も、何も悔いはないんじゃないか、と思います」。
今年、生まれたばかりの悠香ちゃんが、パパの職業を理解できるようになるまでは第一線で活躍し続けたい、と谷原は大会2日目の取材で話していたそうだ。
「私には、そういうことを言わないので…。嬉しいです。私も、本当にそうなればいいな、と思います」と、Vスピーチと選手会長の挨拶を兼ねる夫を見守った。