日大後輩の清水大成(しみず・たいせい、=右)と、謎のポーズでおどける中西直人には、揺るぎないポリシーがある。
「自分が楽しまないと、人を楽しませることはできない。いま自分が出来る全力のパフォーマンスで盛り上げたい」。
そんなプロ魂に魅了された人々の中から自然とファンクラブが立ち上がり、先週大会でも「俺たちの直人」と、プリントしたオリジナルのTシャツを着た方々が、熱心にプレーを追いかけていた。
スタート前でも「あなたのファンなのよ~」などと、ロープの外から声をかけられれば必ずそちらに歩みより、サインや記念撮影や、時には世間話にも対応する。
たとえ自身が窮地にあっても、その姿勢を変えることはない。
6月ころから違和感を感じていた右膝が、とうとう「爆発」したのは先週の水曜だ。
「今まで歩けるには歩けたし、スイングもできていたけど変なスイングをしたときに、めちゃくちゃ痛かった。悪いスイングが原因です」。
4月の「ISPS HANDA 欧州・日本、とりあえず今年は日本トーナメント!」で10位はあるが、その他は17試合に出て、予選通過はわずか3回。
今季不振の元凶でもある。
「距離も出てないし、球は曲がるし。コントロールがまったくできていなかった。スタッツを見てもあからさまで、メンタル的にも充実していなかった」と今季賞金も、まだ300万円余でランキングは102位。
2019年に初獲得した賞金シードも喪失の危機だが、コースに出ればぜったい笑顔を忘れない。
「先週も良いメンバーと、良いキャディさんと、応援してくださる方のおかげでやりきれた」と感謝し、「膝がめっちゃ痛いので、痛くないスイングを必死で考えたら、自然とバランスよく振れるようになり、ゴルフもめっちゃ良くなったんですよ。ケガの功名。これから秋のビッグトーナメントで調子を上げていけるんじゃないか?」と逆境で、手応えすらつかんだ。
「そもそも、僕はシード獲るのに10年かかったし、それを考えれば今の状況なんかへっちゃら」と笑い、「むしろ悩みも前よりちょっとレベルアップしているくらいやし、あかんかったらまた、這い上がればいいだけ」と、今週も前向きだ。
「今大会は“ターニングシュート方式”でしたっけ?」と、ボケも忘れず「今週はポイントターニーとも呼ばれる“ステーブルフォード方式”ですが、通常のストロークとは全く違う競技です。ダブルボギー以上はマイナス3点。ということは、トリを打ってもマイナス3点。イーグルならプラス5点で、5とか6とか打ってもプラスで終われる。選手のアグレッシブなプレーがより引き出されるのでそれがみどころ!」と、選手会副会長として、JGTO主催・選手会共催の新大会を、全力アピール。
「しかもコースの景観が非常に美しくて。この競技方法がより“映え”ます。ギャラリーの方も観戦しやすい形状ですし、ぜひお楽しみいただければ」と、呼びかけた。
痛む膝は、インパクト後に右足をすぐに一歩踏み出す「犬のお散歩ショット」で軽減。
工夫を凝らして上昇を期す。
「自分の売りはポジティブさ。なんだかんだで今週も楽しみますよ!」。
どんなときにもへこたれない。
俺たちの直人は逆境こそ輝く。