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カシオワールドオープンゴルフトーナメント 2023

18番のチップイン「あれは、彼の力」中島啓太の賞金王をアシストした人

昨年9月のプロ転向からわずか1年あまり。

23歳での戴冠は、石川遼(18歳)と、松山英樹(21歳)に次ぐ史上3番目の若さ。

1973年のツアー制施行からならちょうど50代目(23人目)。



新時代のキング決定にふさわしいエンディングになった。

中島啓太(なかじま・けいた)は最後18番で右のカラーからチップイン。

奇跡のイーグルで、賞金王を決めた。
青空に向けて、両のこぶしを突き上げた。

万感の拍手に包まれて、不思議な力を感じていた。



「フォローだったので、左のバンカーを越すつもりでマン振りしたら曲がりました」と、第1打は左に飛んだが、ボールはカート道にあり、ドロップできた。


2打目はつま先下がりになったが、265ヤードのユーティリティで、右カラーまで運べた。
「ドロップできなかったら乗せられなかった」。

60度で打ったアプローチは、「左に跳ねたけど、最後にスライスして真ん中から入ってくれた。あれは自分の力じゃない」。


近所の幼なじみが今週、「天国に逝ってしまった」と、お母さんから聞いたのは、「67」で回って8位タイに浮上した前日3日目のプレー後。

初日は48位と出遅れたが、2日目の「71」で予選を突破し、土曜日に順位を動かしてこられたことで、言うなら今、と帰りの車で思い切ったらしい。


お母さんの気遣いだった。


「家族ぐるみで仲良しだった」。

長く会えてはなかったが、お母さん同士のつきあいは深く「僕のゴルフを応援してくれている」と、知っていた。

「きょうは彼と、彼の家族のためにプレーする」と決めた。


2打差の8位タイから出て、4アンダーの「68」で追い上げ、優勝には2打足りなかったが、金谷拓実(かなや・たくみ)を2差で抜き、最終戦を待たずに決着させた。


「彼のためにも今週で賞金王を決めたい、と思っていた。天国から見守ってくれる、と信じていた。最後のイーグルも、彼の力と思うので。それで賞金王になれたことは、嬉しく思います」。
亡き親友に捧げる初戴冠だった。

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