新時代のキング決定にふさわしいエンディングになった。
中島啓太(なかじま・けいた)は最後18番で右のカラーからチップイン。
奇跡のイーグルで、賞金王を決めた。
青空に向けて、両のこぶしを突き上げた。
万感の拍手に包まれて、不思議な力を感じていた。
「フォローだったので、左のバンカーを越すつもりでマン振りしたら曲がりました」と、第1打は左に飛んだが、ボールはカート道にあり、ドロップできた。
2打目はつま先下がりになったが、265ヤードのユーティリティで、右カラーまで運べた。
「ドロップできなかったら乗せられなかった」。
60度で打ったアプローチは、「左に跳ねたけど、最後にスライスして真ん中から入ってくれた。あれは自分の力じゃない」。
近所の幼なじみが今週、「天国に逝ってしまった」と、お母さんから聞いたのは、「67」で回って8位タイに浮上した前日3日目のプレー後。
初日は48位と出遅れたが、2日目の「71」で予選を突破し、土曜日に順位を動かしてこられたことで、言うなら今、と帰りの車で思い切ったらしい。
お母さんの気遣いだった。
「家族ぐるみで仲良しだった」。
長く会えてはなかったが、お母さん同士のつきあいは深く「僕のゴルフを応援してくれている」と、知っていた。
「きょうは彼と、彼の家族のためにプレーする」と決めた。
2打差の8位タイから出て、4アンダーの「68」で追い上げ、優勝には2打足りなかったが、金谷拓実(かなや・たくみ)を2差で抜き、最終戦を待たずに決着させた。
「彼のためにも今週で賞金王を決めたい、と思っていた。天国から見守ってくれる、と信じていた。最後のイーグルも、彼の力と思うので。それで賞金王になれたことは、嬉しく思います」。
亡き親友に捧げる初戴冠だった。