9アイアンで放った139ヤードの2打目はピンの手前10メートルあたりから、一直線にカップに消えた。
1番ホールと3番ホールの間の坂の上にいた大ギャラリーが反応し、歓声の主が分かると一斉に、急勾配を急いで降り始めた。
石川が、グリーンに上がり、カップからボールを拾い上げる頃には、元々そこで見ていた人たちとでごった返して一時、3番グリーンはカオスと化した。
雲1つ無い澄んだ空の下で軽く手を上げたのを合図に前日8打差の9位タイから遼チャージを始めた。
5番で4メートルを決めると6番⇒6メートル、7番=奥4メートルと快調に沈めて3連続バーディを記録。
2打目を右バンカーに落とした9番や、グリーン奥にこぼした16番は「奇跡的なアプローチでスコアカードは4(パー)だが自分の中では5って感じ」と、自己採点は厳しかったが、顕著に反省したのはその2ホールくらい。
また、20メートルの長い長いバーディトライが決まった12番ですら「入ってなかったら、2メートルはオーバーしていた。自分の狙いでは、センターに打って2パットのパー」と、ダメ出しする場面もあったが、8アンダーの「62」は今季の自己ベスト。
日本勢最高位の4位に入り、翌週のPGAツアー出場権を獲得した日米「ZOZOチャンピオンシップ」でさえ、「やっちまったな、のミスがなぜかうまくいったというのが最終日にもあった」と、本大会の開幕前に漏らしていたが、「きょうは90点。完璧に近いゴルフができた」と、合格点を出した。
「ショートアイアンを持ってから2打で上がるところと、曲がるラインや下りのラインで昨日からのイメージが修正できた。ここまで出せたことはめちゃくちゃ良かった」。
今年の最終日を前にようやく自分を褒めた。
通算11アンダーは首位と2打差の3位タイで、開幕戦「東建ホームメイトカップ」以来となる今年2度目の最終日最終組を、シーズン最終戦で実現させた。
22歳の蟬川と23歳の中島と、32歳の石川の平均年齢25.66歳は、データが残る1985年以降、もっとも若い最終組が完成した。
3日目まで、賞金1位と2位と3位の中島と蟬川と金谷が最終組でバチバチしていた。
3日目終了時は、大会5位に賞金4位の宋永漢(ソン・ヨンハン)も名前を並べた。
「ケイタとタイガがいて、タクミとヨンハンがいるところにいるっていうのは今年、できなかったこと」。
未勝利のまま来た今年最後の試合で今年の顔に混じって、今季の初勝利に挑める。
本大会でのトップ10は、5位に入ったプロ転向最初の2008年など6回。
優勝は、2015年と2019年の2度。
最終日最終組は2011年(3位)と、2015年(優勝)の2回。
2009年は、大会19位で18歳の史上最年少キングも決めた。
史上最年少勝者として初出場を果たした2007年から数々のドラマを起こしてきた馴染みの大舞台。
この日、ウェブ紙面作りで訪れた「学生新聞」の大学生記者3人の取材に応えて「1年間通していいプレーが出来た30人だけが出場を許されて、ここにいる」などと大会への思いを熱く語った。
「明日の後半で、アレを争えるところにいたい」。
前日発表された阪神由来の流行語大賞になぞらえ、意気込みを語った。