初日から首位を走る完全優勝で通算5勝目(現在8勝)を飾ったが、「あのときは無我夢中で勝ちましたし、全然覚えていない・・・」と、苦笑する。
唯一、おぼろげにある18番も、今年は当時のインコースが使用されず、当時のアウトコースが、今年のインコースに。
前回も使用したホールが半分しかないことも手伝い、「かろうじて覚えているのはファウェイが“ない”って言っていいくらいに狭いってこと。関西オープンあるあるですね」。大会ならではの特徴ならば覚えはある。
「11年前・・・。あれからいろいろありました」と、自身を取り巻く環境も変わった。
中でも一番は、45歳で迎える今季、ファイナルQTランクの資格で出場すること。
昨年の賞金ランキングは76位。
一昨季の20ー21年(109位)に続く、2年連続の賞金シード落ちを喫したばかりか、2019年「パナソニックオープン」の優勝資格で持ってた出場権も切れてしまい、昨年のQT受験は実に16年ぶりだった。
同ランク2位から復活に賭ける今年は、3週前のジャパンゴルフツアー開幕戦「東建ホームメイトカップ」から出ずっぱり。
「がむしゃらにやればいいという年齢も過ぎて、無理もできなくなってきた」と、あえぎながらも先週のABEMAツアー開幕戦「Novil cup」は11位に入って「まだやれる」との手応えを掴んだ。
「時代も、選手の顔ぶれも変わっているし、みんな飛ばすし、予選のカットラインも今までにないくらいに高くて。上がぎゅっと詰まっている感じ」と、若者たちの勢いには気圧されるが、今年も一緒にオフキャンプを張った谷口徹や、この日は練習の合間にクラブ談義に華が咲いた永久シードの片山晋呉ら、「50歳を過ぎてもまだシードを持っている先輩だっている。自分だって」と、気力を絞る。
つい最近判明したことだが、昨年史上初のアマ2勝を飾ってプロ転向した蟬川泰果(せみかわ・たいが)は、小学時代に武藤と同じジムに通ってきていたそうだ。
他のジュニアに紛れて一緒に練習したこともあるようで、「みんなも早くツアーに出ておいで、と話した子たちがいま実際に、こうして同じ舞台で活躍し、自分もまだここにいられるというのが嬉しい」と、噛みしめる。
年齢を経れば経るほど、「若手を指導したり、ツアーさんにも意見を言ったり、そういう役割もある」と、ベテランの使命を感じている。
「その中で、先輩の威厳も見せたい」。
11年前と同コースでの、11年ぶりの大会2勝目への気構えも見せた。