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日本プロゴルフ選手権大会 2024

共に偉業がかかる⇒杉浦 VS 蟬川=淡々VSメラメラ

最終日を前に、上の2人が混戦から抜け出した。

通算18アンダーの単独トップに飛び出た杉浦悠太(すぎうら・ゆうた)を、3位に3差をつけた蟬川泰果(せみかわ・たいが)が2打差で追う。



91回大会で、どちらが勝っても長い歴史に偉業を刻める。

蟬川が挑むのは、アマVの「日本オープン(2022年)」と、2023年の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」に続く、最年少での日本タイトル3冠。

達成できれば、ジャンボ尾崎の27歳を4歳も更新できる。


その前哨として、蟬川が3日目に挑んでいたのは、大会初となるボギーなし優勝(1985年以降の記録)だ。

初日から2日連続ボギーなしで迎えた3日目は気合が入った。


「ボギーフリーの優勝も、ボギーせずに回り切った試合もないので、自分の中の記録作りというか。メジャーで出来れば自信にもなる」と、睨んで出ただけに、ついにこの日の最終ホールでボギーが来た際には「めっちゃ悔しかった」と、むき出しにした。


左ラフから手が離れた2打目を、また左のラフに入れ、寄せきれずに残した3メートルを外した。

「すごいイライラしていました」と、パターを両手で頭上に掲げるポーズに無念がこもった。



「あとあと言われることも多いので」と、蟬川が記録にこだわる根底には、史上初のアマ2勝を達成した2022年の「日本オープン」がある。

95年ぶりのアマV記録は最終日の朝、スタート前に把握し、勝ち切った。

「今でも言っていただけるので。記録を作って優勝の回数を増やしたい」と、原動力だ。


4日間ボギーなしの記録は残念ながら消えたが、過去に本大会では、1996年のジャンボ尾崎と、2008年の片山晋呉の2人が、ボギー1個で勝ち切ったという例があり(1985年以降の記録)、「ボギー1個で回り切りたい」。

年少での3冠記録と共に、最終日も改めて、ボギーなしのラウンドに挑むつもりだ。


首位タイでスタートしたこの日は、序盤2番のイーグル獲りで、「突き放せる展開がワンチャンあるかな」と、よぎった瞬間があったが杉浦は、一度は蟬川に3差で突き放されながら、後半12番から4連続バーディと、逆襲をかけてきた。


「伸ばし合いにはならないと思っていたら、ぽんぽんバーディ獲って。自分もいいゴルフをしているつもりでも、フラストレーションがたまるというか」と、1歳下にけん制された。

「誰にも負けたくない。杉浦選手にも負けたくない。ガチで獲りに行く」と記録にも、相手にも気持ちを隠さず、真正面からメラメラするのが蟬川最大の魅力。


杉浦は対照的だ。
蟬川にイーグルを奪われた2番でも「まだ始まったばかりだからと思っていました」と、淡々としていた。

蟬川がボギーなしラウンドに挑む隣で「明日のことは考えていなかった。1打1打、集中してバーディ獲って」と、無心だった。



蟬川のタイガチャージは、アマ選抜のナショナルチームで共にしたときから知っている。

「バーディ獲りだしたら止まらないイメージ。さすがに気が抜けない」と、警戒はする。


杉浦がうまく結果を残せなかった時期、蟬川にどんな気持ちでやっているのか相談してみたことがあるそうだ。

「どんどん攻めていく姿勢。そういう気持ちは大事だな、と思いました」と、ひとつ年上の背中に学んだ部分も大きい。

2打差で追われる怖さも「もちろんあります」と、認めた。


でも、首位で走り続ける今週は、昨年11月の「ダンロップフェニックス」で史上7人目のアマVを達成した際より「緊張はしていない」と、言った。

「あのときは緊張しすぎていたので。今回は心臓が飛び出るとかいうのは今のところない」と、冷静だ。


蟬川には、「一緒に回った感じでは、杉浦選手は仕上がっている」と言われたが、「調子はいいですね。パッティングがいいです」と、ニッコリ否定もしなかった。


杉浦には、大会史上5人目となる大会初出場⇒初制覇と、2009年の池田勇太(いけだ・ゆうた)の16試合を抜くプロ転向後12試合の最速大会V(※いずれも1985年以降の記録)と、大会史上8人目(9例目)の完全V(※1973年のツアー制度施行後)がかかるが、「そうですか…」と、興味は示さなかった。


「記録とかは正直、気にしていない。記録より優勝が嬉しい。明日も暑さに負けず、優勝目指して頑張ります」。

最終日も対照的な2人の激突が見られる。

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