先週の「全米オープン」から帰ったばかりだったが、「明日から大会が始まります、というのを我々自身のゴルフで知っていただく」と、疲れも見せずに自らのプレーで告知。
にぎやかに進行したマッチプレーは、何よりも雄弁にゴルフの楽しさを伝えた。
本戦に遺恨が残らぬ引き分けで勝負は決し、和やかに迎えたエンディングで石川遼の口から今週最大の目玉が告げられた。
大会初日の生中継中に、後半9ホールで石川とキャディの佐藤さんが、それぞれの声を拾うピンマイクをつけてのプレーに挑戦するという。
堀川に「言動に気を付けてくださいね」と、茶化されたとおりに「僕らの普段の会話が視聴者のみなさんにがっつりと聞こえる。そういう挑戦ができるのも、この大会ならでは。視聴者のみなさんには新鮮で、面白いんじゃないか…」。
かつて、キャディさんがピンマイクをつけて帯同したことはあったが、おそらく選手自身の挑戦はレギュラーツアーでは今回が初めて。
「どんなふうになるのか。これはダメとなるかもしれない」と笑うが、より深く、プロゴルフのだいご味を知っていただくという点では、挑戦する価値は無限大だ。
「誰かにお願いする、というより自分がまずやらないと」。
大会の実行委員長に初就任した今年、自ら未知の聖域に踏み込む。
4月11日には、関係者がコースで一堂に会した全体会議に、阿久津未来也(あくつ・みきや)と参加。
無料ギャラリーバス(土日のみ)の運行手配を運営側にお願いしたのもその時だった。
土日にジュニアを対象とした練習グリーンの無料体験会や、那須塩原市内の小中学生を対象にした観戦チケットの無料配布や、県内高校生を選手会のスペシャルメディアとして招待するなど、選手みんなでアイディアをかき集め、関係者のみなさんの献身も支えにしながら、次々と実現にこぎつけた。
「手作りの大会なので。試しながらなんですけど、男子ゴルフのショットやプレーを間近で、また写真や動画でも、目に焼き付けて帰っていただきたい」と、思いがこもる。
本人は「全然大丈夫です」と気丈に言ったが帰国直後で時差も疲れもないわけがない。
大会実行委員長という大役を背負いながら、選手として結果を求める重圧や気苦労は確実にあると思うが、開幕前日の生中継も、本戦でのピンマイクの装着も、「僕らはゴルフをやってなんぼの仕事。プラスαではなく、普段やっていることで喜んでもらえることがあるのなら。負担をかけず、10年、20年と続けられるようなことを考えている。今日の収録も、大変というよりは練習できるし、4ホール回れるし、楽しいし何も負担ではない」と、石川。
大会実行委員長は、主催試合で誰より楽しむ背中を見せる。