悲劇は石川遼と並んで入った15番で起きた。
「キャディさんがいてくれたらフライヤーせずに耐えていたかも」という、ラフから打った2打目。
ジャッジしそこね飛びすぎて、グリーン奥の笹薮の中に入った。
念のため暫定球は打ったが、捜索の末、わりと早くにボールは見つかった、と思った。
グリーン周りのラフまで運び、うまく出せたと思った。
だがその後すぐ、いま打ったのは、自分のボールではなかったとわかった。
「頭が真っ白になりました」という。
もういちど笹薮に戻り、やっと本球を見つけたが、今度こそ打てるような場所にはなかった。
誤球による2罰と、アンプレヤブルの1罰を加えて、再び元のセカンドへ。
6打目は今度、手前のバンカーに入った。
寄せきれずに2パットの「9」を叩いた。
あっという間にV争いから落ちた。
次のホールへ向かう途中で一瞬、目頭を押さえかけた。
「今日は1日、自分でもびっくりするくらいに緊張して。冷静ではなかった」という。
加えて今週は、電動カートのセルフプレーに、最終日の雨が拍車をかけた。
「悔やみきれない」と、泣きかけたが、「ここは違うぞ」と前を向いた。
「ここで腐らずに」と、上りの17、18番で連続バーディ。
最後まであきらめない姿をギャラリーにも見せた。
「自分よりもうまいプレーヤーと戦って、自分の力を出し切れなかった。石川遼、という選手を称えるしかない」と潔く、「きょうは最終組というより遼くんと回ることに緊張していました。やっぱりカッコイイですね」と、笑顔さえ浮かべてみせた。
電動カートを操作し、クラブハウスに戻ってくると、練習仲間の木下康平(きのした・こうへい)が真っ赤な目をして迎えてくれた。
泣けない自分の代わりに涙を流してくれた友人に、ほんのちょっぴり救われた。
「前半は、フェアウェイにいかない状況でもどうにか耐えて優勝争いできたし、苦い経験であり、いい経験。あとは冷静になれる頭があればそれこそ優勝にも近づけると思う」。
この日のV争いを見てくださった方々も、カピバラ似の「カッピー」をこれからも応援してくださるはずだ。
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