Tournament article
久光製薬KBCオーガスタ 1999
米山剛、野上貴夫を1打差でおさえてツアー2勝目
1番ミドル。通算8アンダー首位スタートの野上は左3.5メートルだ。
対して、野上と1打差2位でスタートした米山の2打目は、ピン下5メートル。
両者バーディチャンス。だが、絶好のチャンスをモノにできない野上の先手を取って米山はこれを沈めた。通算9アンダー。早速、野上に並ぶ。
3番ショートホールでは米山がピン下1メートルにつけると、野上は左3メートル。ここでは野上が先にがっちり沈めてバーディ。米山も楽々沈め、両者譲らず。
5番ミドルでは、その野上が見せ場を作った。
ピンは、大きなコブを超えた先の右奥端。野上の第2打は、ここしかない、というポイントをきっちり捉えた。理想のラインを描いて、ピンまで2.5メートル。完璧なショットだった。
マウンド下15メートルと、難しい位置につけた米山を突き放すチャンス。
が、野上はこれをはずしてしまう。
「勝負どころで、取れなかった。大事なところで、しっかり打ててない。球の転がりが悪かったね」(野上)。
ひときわ大きな歓声があがったのが、6番ロングだ。グリーン手前、ピンまで30ヤード。先手を取った野上のアプローチはあわやカップインという絶妙なタッチでピン横30センチ。米山も負けてはいない。突き放しにかかる野上をピン手前50センチのバーディチャンスにつけるアプローチでガッチリと捕らえて放さない。両者バーディという好ゲームにギャラリーから大歓声が沸きあがる。
ギャラリーのひとりが叫んだ。「これぞ、最終日最終組!!」
しかし、9番ロングロングホールで、均衡が崩れた。
米山のミス。フェアウェーど真ん中の第2打を、バッフィーでグリーン左サイドのギャラリーの中に打ちこんだ。そこからの第3打はショートしてグリーンとバンカーの狭間のラフへ。4打目はピンを大きくオーバーして残り5メートル。
「第2打は、クラブ選択ミスではなく、打ち方のミスです。3打目はラフがギャラリーの方々に踏まれて、ベアグラウンドのような状態になっていた。第2打は、お客さんに当たってしまったんですか? …それは気の毒なことをしました。でも当たらなければOBになってしまってたかもしれない。ラッキーでしたね」(米山)
アイアンで2オンに成功していた野上は、20メートルのイーグルパット。2メートルショートさせたが、バーディはしっかり取って、ようやく米山を2打突き放した。
しかし、最終日最終組のバックナイン。野上に、その重圧がのしかかったのか。
12番で、2日目から初めてのボギーを叩くと、大粒の雨が振り出した14番。 右3メートルにつけてバーディとし、11アンダーと息を吹き返した米山に再び並ばれた。
さらに、16番ミドル。
「6番アイアンじゃ大きいかなと思って軽く打つつもりだった」野上の第2打は、当たりが薄く、グリーン手前のバンカーへ。ピン左6メートルにオーバーさせ、ボギー。米山の逆転を許した。
「14番で再び追いついたときは、『ああやっと追いついたな〜、よしこの状況を楽しみながらやってやろう』という感じでしたね」(米山)
勝負のゆくえは最後までわからなかった。米山も、16、17番と再三のチャンスを逃し、18番ロングではラフからラフを渡り歩いてピンまで2メートルの微妙な距離のパーパットを残していたからだ。
野上が先に、ピンまで5メートルのバーディパットにトライ。これを沈めれば、勝ちか少なくともプレーオフに持ちこめるはずだった。が、ボールはカップのわずか右横を通過。
それを見てから米山は、パーパットを慎重に沈めた。その瞬間、下から上へ力強いガッツポーズで、この日の激闘を締めくくった。
米山剛のはなし「9番ホールを除いてはかなり納得のいくゴルフができたと思うし、気持ちを強く持つことができました。自分に合格点をあげられると思います。三菱自動車(トーナメント)のときもそうでしたが、気楽に、あまり緊張せずに回れました。むしろ、ジャンボさんとまわった初日、2日目のほうが緊張していたと思う。
(初優勝から3ヶ月もたたないうちに2勝目をあげて)ちょっと怖い気がします。今までになく調子がいいもんで…。1勝をあげるまでは、初優勝にこだわって、自分にプレッシャーをかけてカラ回りしていたというのがあるんですが、今はまったくそういうのはありません。とにかく1打1打一生懸命やって、それが結果になればいいという感じ。大それたことは何も考えてないんです。
ただ、ぼくはこれまでいろいろな経験をしてきているし、負け続けてきたことが役立っていることもある。
野上君も日本でいずれ勝てる選手だと思いますが、苦労して優勝してもらいたいな、と思いますね」