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全日空オープン 1999

ツアー5勝目を勝ち取った細川和彦

 細川和彦は、「きょうはオーバーパーを叩かなかったから、満足のいくプレーができたといえると思う」と、この日のプレーを振り返った。
 決して楽な勝ち方ではなかった。最後には、海外ツアーで活躍する強豪・尾崎直道と、友利勝良に1打差まで追い上げられる苦しい展開。
 「18番のファーストパットを打ち終わるまで、ずっとプレッシャーがかかったままだった」というように、勝負は最後までわからなかった。
 前日、「アンダーパーを出して優勝」と最終日の豊富を語った細川は、けっきょく、この日、イーブンでまわり、通算11アンダーで辛くもツアー5勝目を勝ち取った。
 18番の右ラフから「グリーン真中をねらって」放った第2打。
 ちょうど9番アイアンで軽く打てばいい距離だったが、細川はあえてピッチングウェッジで渾身のショットを放った。
 イメージは「ニック・プライス」だ。
 先週のサントリーオープン、最終組でともにまわったプライスの強烈な印象は、この日まで、細川の脳裏にこびりついたままだった。
 サントリーオープン最終日、自らは戦線から脱落したが、細川は、タダで転ぶことなくプライスのプレーを仔細に観察して肥やしにした。
 「プレッシャーのかかる場面でもスイングが緩まない。大き目のクラブで軽く振る、という中途半端なプレーがない。それに、ぜったいに焦らないんだ。だからいつでもしっかりスイングできるんだと思った。見習ってぼくもきょうは極力落ちついてプレーするように心がけた。多少曲がっても、中途半端に合わせるより、振りきるようにした。
 18番のセカンドは、9番アイアンで軽めに打つより、ピッチングウエッジで、『思いっきり振っちゃえ!』と思って打った」(細川)。
 ピン左6メートルに2オン。このパットを2つで沈めれば、勝てる。3パットすれば、直道と友利とプレーオフ。
 「とにかく寄せればいい」。慎重に打ったファーストパットは、OK距離のカップまで50セ
ンチのところで止まった。
 細川の緊張が、ようやく解けた瞬間だった。

 ホールアウトした細川を待っていたのは、師匠の尾崎直道だった。握手して『おめでとう』と言われ、細川は思わず男泣きした。
 直道さんが待っていてくれたことが、何より嬉しかった、と細川は言った。「いなかったら、泣かなかったのに」。最後はちょっぴり強がってみせた。

細川和彦の話
「17番のパーパットを沈めたとき、友利さんが10アンダーにしたことを知ったんです。だから、18番のティショットは無意識に2番アイアンを握ってた。それまで3日目までスプーン以下を握ったことのないホールだったのにね。直道さんが10アンダーだってことがわかったのが、18番のセカンドを打ってから。それで、ファーストパットは、とにかく寄せれば勝てる、と。それまでずっとプレッシャーがかかりっぱなしだった。
 1番から18番まで、ずっと辛かった。でも、これまで2位を何度(今季4回)も経験して悔しい思いをして、いまは、そのときの経験がほんとうに役立っているんだと思える。
 これまで、勝ちたくて勝ちたくて、その気持ちが空回りしているところがあった。すべては気持ちの持ちように問題があったのだと、思う。
 きょうは出足から集中できていたし、余計なことを考える余地がなかったんだ。 たとえば、パットを打つときも『これをはずしたらどうしよう』ではなく、『これを入れなくちゃ』という気持ちでできたのがよかったのだと思う。こんなふうに思えたのは初体験だよ。
 5勝目をあげたら、したいことが一杯あった。米ツアー挑戦もそうだし、結婚(戸塚玉枝さん、29歳)もそう。このままずっと勝てなかったら、そのまま結婚はしないって、自分と親父と決めていたんだ。だからこれまで余計、入れこんで空回りしていたのかもしれないね。9月の優勝は、嬉しいね(これまでの4勝はすべて8月の大会だった)。
 勝てばまた次の目標が出来る。これからは今まで以上に、ツアー5勝に恥じないゴルフを、していかなくてはいけない。さらに大きな目標を持って、秋以降の試合もがんばっていくよ」

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