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ブリヂストンオープン 1999
「ツアーを支える人々」連載3回
ブリヂストン契約プロの伊沢利光は、今季2週連続Vを達成したが、この勝利の陰にも、やはり、クラブ技術スタッフの、並々ならぬ、努力があった。
伊沢が、中でも特に絶大な信頼を置いているのが、ブリヂストンサービスカーのスタッフのひとり、本吉興毅さん(31歳=写真)だ。
本吉さんと伊沢のつきあいは、もう10年以上にもわたる。
「伊沢プロの場合は、言葉も必要ないときがある」と元吉さんは言う。
プロが何で悩み、何に不安を持っているのか、そのスイングを見ているだけで、わかってしまうからだ。
2週連続Vの前後、伊沢のゴルフは絶好調だった。「好調なとき、クラブに対する不安感を持つプロは少ないんです。悩みがないと、当然、サービスカーにやってくる回数はグンと減りますよね。それで、『あ、あのプロは今、調子がいいんだな』とわかる。サービスカーにくる回数はいわば、バロメーターでもあるわけですよね」(本吉さん)
もっとも、バスに来ないなら来ないで、「いったい今どうなんだろう」と心配になるのは親心みたいなものだろう。本吉さんの体は自然と、練習場やスタートティへと向かっている。
伊沢は、気持ちよさそうに球を打っている。調子がいいから、本人には何の不安も悩みもなさそうに、淀みのないストロークを続けている。
それでも、長いこと伊沢を見守ってきた本吉さんには、見えてくる。クラブが原因で起きる、ほんの少しのブレや違和感。それが、他の誰にもわからなくても、本吉さんには、見過ごせないのだ。
気になる箇所を見つけると、すぐに本吉さんは、プロが何も言わないうちにそっとクラブをバッグから抜き、バスに持ちかえる。バスでグリップ位置のずれを直し、バランスを見直し、ヘッドに丹念にヤスリをかける。そのとき、本吉さんの頭には伊沢のスイングがシュミレーションしている。
思いつく限りの調整を済ませて、本吉さんは、またそっと、クラブをバッグに戻しておく。そんな本吉さんを見つけると、伊沢は何もかもわかったふうに笑顔を作る。 こんな日々の、信頼感の積み重ねが、伊沢の勝利を支えたといっても言い過ぎではないだろう。
「まさか。勝ったのは伊沢さんの実力です。ボクはただ、自分ができることに全力を尽くすだけで…。変なクラブを使って、プロに悪影響が及ぶことがボクらには1番つらいですから」