Tournament article
つるやオープン 2000
「2000年/プレーヤーたちの挑戦」中嶋常幸
“初戦”を迎える心境を食事にたとえ、「お腹がぺこぺこのときに、好きな食べ物を目の前に置かれたような感じ」と、表現した。今季を“リベンジの年”と位置付けている、とも言った。「これまでの自分自身の不甲斐なさに逆襲する、という意味のね」。
76年間の初勝利から95年まで20年間で56勝をあげた男が、昨年、賞金ランク81位で屈辱のシード落ち。21戦中、予選落ち9試合。ベスト10入りは、東建コーポレーションだけだった。99年の開幕第1戦の同大会では、2、3日目こそ首位にたったが、最終日に76を叩き7位に沈んだ。最終日5打差6位だった尾崎将司に、あっさり道を譲り渡したのだった。
秋には、長年わずらっている腰のヘルニアと左太股関節部分の痛みがピークに。
「オレはもうダメだ、限界かもしれない。状況によっては引退も考えている…」と弱気な言葉さえ吐いたものだった。
その中嶋が2000年、何もかも一新し、真の復活に挑む。
まずは道具。
プロ転向以来契約を結んできたミズノとの昨年末の契約解消を機に、「今年からは自分の使いたいクラブを使う」と、オフに打ちこんだ16種のドライバーと7セットのアイアンから厳選したセット持参で、“初戦”の会場に現れた。
ドライバーは「たとえ10ヤード飛ばなくなっても、フェアウェーを捉えたい」と選びぬいたタイトリストの975D。
アイアンは、『ジョイメニー』というブランド。中嶋のスイングを知り尽くしたスタッフが作りあげた、もっとも信頼のおけるクラブだ。
パターは、ピン型、マレット型、両方の特性を生かしたものを。
「新しいクラブのおかげでスイングも“リフォーム”されているんだよ」と、確かな手応えをほのめかしたものだ。
オフの1月には、近視の視力回復手術にも踏み切った。おかげで0.01未満だった視力が1.2まであがり、「高校時代から」という長い付き合いだったメガネをはずして裸眼でのプレーを初披露。
「すごく世界が明るくなった。アプローチ、パットが楽だね。特に、パットはラインがくっきり見える」と、口ぶりも、すこぶる明るかった。
今季開幕戦を迎えた気持ちを、おどけて関西弁であらわした。
新しいクラブ、回復した視力については、「ええ感じ!」。
完全に回復したとは言えない体のほうは、オフに負担をかけないよう気を配りつつ行った、トレーニングの成果か、「ボチボチでんな」。
ゴルフ全般の調子は「ごっつ(大変)エエ感じ」。
そして手応えは、「『来てます、来てます』って感じだね(笑)」。
今年45歳。「中嶋は、もうだめなのか」といぶかるファンもいる。しかし、「それでも応援してくれる人達のためにももう一度、勝ちたいんだ。今季の僕は、まだまだ成長を続けていけると思う。今年は、出場試合を厳選し、1戦1戦、勝負をかけてやっていくつもりだ」。
5年ぶりの復活Vへ―。
ただその一点を見据えた中嶋が、2000年ツアーという海原に漕ぎ出している。
★中嶋は今週、マスターズトーナメントのテレビ解説(TBS系列)のため、オーガスタに飛んでいる。