Tournament article
〜全英への道〜 ミズノオープン 2001
「これでイギリス!!」
18番でパーパットを沈めた瞬間、田中は思わずつぶやいたという。
「これで、イギリス!!」
自ら仕掛けたこととはいえ、普通なら、無謀ともいえる目標を達成させてしまった自分が、信じられなかった。
「自分でも、こう、なんていうか、頭の片隅に、“俺ってすごいなあ・・・”って冷静に見ている自分がいて・・・。でも、それをやってのけたのも、ここにいる自分。今週は、自分のことを誉めてあげたい」
4月のつるやオープンで今季初Vをあげたものの、その後は、不本意な成績が続いた。
全英オープン日本予選が始まった5月。第1戦の日本プロでは、予選落ち。
またその後、全米オープンの最終予選をかねて渡米し、いくつか米ツアーにも挑戦したが、打ちのめされて帰国。
先週のよみうりオープンは腰痛のため、やむなく欠場を決めたため、今大会が始まるまでの田中の全英日本予選ランクは、54位と完全に“圏外”だった。
全英切符を手に入れるためには、今週、勝つしか田中に道はなかったのだ。
たったワンチャンスをモノにするのは、ゴルフの好不調というレベルを超えて、至難の業だ。
まして、そのワンチャンスに賭けるとファンの前で公言し、さらに、それを実行してみせるなど、並大抵のことではない。
それでも田中は、大会が始まる前から自らを追い込むように、こう言いつづけた。
「今週は、勝ちます」。
そして難コンディションの中、4日間ただひとり60台をマークして、ひたすら、全英への道を走りつづけたのだった。
しかし、そんな大きなことをやり遂げた後でも、田中に深刻さはなかった。
むしろ、胸の内にわく喜びと興奮を隠すように、あっけらかんと、最後まで、ファンサービスを忘れなかった。
「わしゃあ、広島生まれじゃけえねえ、ここでこうして勝てて、嬉しいんよねえ」
田中の地元・広島と、岡山の県境に位置する瀬戸内海GC。詰め掛けた満員のギャラリーに、広島弁で語りかけて笑いを誘った。
田中が気の利いたひとことを発するたびに、ファンはその話術にも、引き込まれていくようだった。