Tournament article
つるやオープン 2001
最悪の幕開けから、最高のエンディング
1番パー4。
セカンド地点までやって来た田中が、すぐに踵を返して、ティグラウンドに帰っていく。
「ドフック」(田中)だったティショットも、「左のラフか、悪くてもカート道」と判断。楽観してフェアウェーを下ってきたのだが、ボールはコースを大きくそれて、左のがけ下にあった。
それでも、ちょうど、林の抜けたところに落ちていたため、「良い状況だ、これなら打てる」と、田中は安心していたという。
しかし、ホっとしたのもつかの間、キャディのサイモンさんが「ダメだよ」と指差したのは、OB杭。打ち直しだ。もと来た坂をのぼっていく田中の背中が、怒りに燃えていた。
「4日間をとおして、1番ホールであんなところに打ちこんだのは、多分、僕だけ。“なんでこんなところに打つんだ”と、怒りを通り越して、情けなささえ感じた」
いきなりのダブルボギー。もともとあった5打差は、さらに開いた。
1番ホールに居合わせたファンには、あきらめムードが漂っていた。
だが、田中だけは、自分を信じた。
「これで終わってしまったわけじゃない」、気持ちの切り替えにつとめ、昨年逃してしまったVだけを、見据えた。
2番ホールで、1メートルのパーパットを入れると、良いフィーリングがつかめたような気がした。
「今日は、余計な素振りをしないで、迷わずに、リズム良く行こう」構えてすぐ打つタイミングに徹し、キレの良いプレーを心がけた。
6番から、怒涛の5連続バーディで、首位を走る河村を捕らえた。
そのあと、11番の河村のボギーで逆転に成功。
15番パー5(500ヤード)のイーグルで、王手をかけた。残り229ヤードの第2打を、右5メートルに乗せ、「軽いフック」を読み切った。
16番で、グリーンをはずし、ボギーとしたが「ここまで盛り上げておいて、負けられない」
とにかく、最後を決めてバーディで河村を待とうと誓った。
18番は、奥から3メートルのバーディパット。ボールがカップに吸い込まれた瞬間、腰の下で力強いガッツポーズだ。
最悪の幕開けから、最高のエンディング。
ファン待望の“リベンジ”もやってのけ、1年越しのチャンピオンは言う。
「ああいう、最初の気持ちの切り替えが、優勝につながったのは、僕にとってもはじめての経験。きっと、今後の情報として生かされると思う。
でも、4日間のゴルフの内容を振り返れば、まだまだ。今の自分の30歳という年齢らしい、大人のゴルフができたとは言えません。
これからは、ナイスバーディ&ナイスダンディと呼ばれるように、渋めのゴルフを狙っていきたい(笑)」
ひとまわり大きくなった田中は、これからも、さらに多くのファンを惹き込んでいく。