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国際オープンゴルフトーナメント 中日クラウンズ 2001
▼ 3日目、トピックス「びびっても、しょうがない」
この日のプレーぶりを振り返る渡辺の顔が、いつになく神妙だ。
「今週は、晴天続き。グリーンはますます硬く、速さを増しています。しかも今日は、ピンが端に切ってあるホールが多い。そんな状況で今、自分のできることは何なのか・・・。それを考えながら、プレーしたんです」
11番パー4、残り71ヤードをサンドウェッジでピン右1メートル半につけてバーディ。
続く12番パー4は、145ヤードを9番アイアンで手前4メートルにつけて2連続だ。
いずれも、ティショットで確実にフェアウェーをキープして、奪ったホール。
「僕みたいに非力な選手は、今日みたいなコンディションだと、フェアウェーからしか、ピンに寄らないんですよ。このピン位置で、良いプレーをするためには、第2打を何番アイアンで打つのがいいか? 自分の力を超えた長いクラブでグリーンを狙わなければならないときは、広くグリーンを使うようにしたり、常に、冷静に考えながらのラウンドでした」
その結果の通算8アンダー、3位タイ。
「今日は自分が想像していた以上に上位が伸びていかなかったこともあって、16番から18番を迎えたころには、びっくりしていましたよ」と、話す。
クラブの新化と世代交代の波で、ますます伸びていく平均飛距離。
「彼らと同じだけ飛ばしたい」との欲は、渡辺にも抑えきれない。
だが、44歳を迎えた渡辺に「若い者たちのやり方に憧れて、同じことをやろうとしても、ムリがある」と、諭してくれた人がいた。
青木功だった。
4月のオープンウィーク、静岡県の愛鷹シックスハンドレッドクラブで、ともにラウンドしながら過ごした5日間。59歳の、師匠の言葉が胸に堪えた。
「きっと、青木さんにも、若いときと同じようにしたくて、でもできなくて・・・という経験があったはず。あれほどの人が言うことには、ものすごい説得力があった」
それからというもの渡辺は、ショットより、小技の練習に時間をかけるようになった。
「飛距離を求めるひまがあれば、ピッチングを磨け・・・。青木さんが言っていたのはそういうことなんです。若い子たちのようにパワーはないけど、そのかわりに、みんなが飛距離をコントロールしなければないホールで、自分はためらわず振っていける。それでも、みんなと同じところから打てるという利点があるじゃないですか。それが、自分の持ち味。青木さんのおかげで、それを伸ばす方法は何かを考えるようになったんです」
また、精神面の教えも、大きかった。
「優勝争いは、何度勝っている人間でも、残りホールが少なくなってくると、かかってくる緊張感は同じ。青木さんは、『自分ひとりだけが、プレッシャーを感じているなんて、考えるなよ』って・・・」
この日は、テレビ解説とジュニアレッスン会で会場を訪れていた師匠の前で、最高のゴルフが披露できた。
渡辺は、その充実感に溢れていた。
首位と2打差で迎える最終日。
渡辺は、「もう、びびってもしょうがない」とキッパリ。
「こんな位置でゴルフができるっていうのは、選手にとって最大の楽しみ。最初のハーフは精一杯自分のゴルフをして後半もこの位置にいられたら、目いっぱい、優勝を意識して戦いたい」と、言い切った。