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ダイヤモンドカップトーナメント 2002
「たったひとりでは、ここまでやれなかった」
7年ぶりの復活Vは、「たったひとりでは、出来なかった」と、中嶋は振り返る。
昨年、専属契約を結んだ、石渡トレーナーの存在。
今年ツアープレーヤーとしてデビューした長男・雅生に、この春、婚約した長女・佳乃さん。
古くからの友人、知人たちは、「もうだめかも」と弱音をはく中嶋に、「やめるのは、すぐできる。まだまだ頑張れる」と励ましてくれた。
また、復活Vを根気良く、待ちつづけてくれた大勢のファン。
いつも、何かと気をかけてくれる尾崎将司もいた。
昨年の日本シリーズでは、青木功が、 「もう勝てるね」と言ってくれた。「青木さんの目にもそう映っていることが、嬉しかった。素晴らしい先輩たちにも、恵まれた」
そして、そんなたくさんの人たちの中、もっとも大きな存在としてあるのは、どんなときも変らぬ愛情で支え続けてくれた、律子夫人だ。
拭っても拭っても、こんこんと湧き出る涙は、止まらない。
「もう、何がなんだか、わからなくって…」
中嶋がドン底の時も、「いつも明るく前向きに」、支えつづけた律子さんだったが、18番グリーン脇で優勝シーンを見届けた瞬間は、さすがに、涙を堪えきれなかった。
前日3日目は、午後から知人の結婚式がありアウトの9ホールしか、応援できなかった。夜、律子さんが帰宅すると、痛む肩を懸命に、氷で冷やす中嶋の姿があった。
「かなり痛かったようです。今日も痛み止めをのんで、スタートしたくらいでしたから…」
ホールアウト後は、真っ先に、夫の身体をおもんぱかった。
スコア記載エリアでアテストを済ませ、7年ぶりの表彰式にのぞむ中嶋が、律子さんの姿を見つけ、手を振っていた。
すぐにでも、駆け寄ってねぎらいたい気持ちこらえ、律子さんは、涙を隠し、照れ笑いで手を振って、夫を見送った。
優勝インタビューに応える姿には目を細め、「中嶋にとってゴルフは天職。それを無駄にしないようにと、ずっと頑張ってきた。ご褒美を下さった神さまにはほんとうに、感謝したい…」しみじみと語り、ギャラリーに混じって、惜しみない拍手で夫を称えた。
優勝スピーチを終えて、ようやく中嶋が、表彰式の18番グリーンから、下りてきた。
一瞬、見つめあった2人。それから、中嶋は、いとおしむように律子さんを、抱きよせた。
7年ぶりのV。それは、ツアーきってのおしどり夫婦が、ますます絆を深めた瞬間でもあった。