Tournament article
日本オープンゴルフ選手権競技 2002
「宇宙の果てまで、飛んで行っちゃいそう!」
喜びを全身に滲ませたシェリー夫人が、18番グリーンに、飛び込んできた。
その体をしっかり受け止めたスメイルと、身長差43センチの熱い抱擁。
祝福のキス。
「アンビリーバブル!! 嬉しい、なんて言葉じゃ足りないわ! 宇宙の果てまで、飛んで行っちゃいそうよ!」
うれし涙が、頬を伝った。
シェリーさんが、千葉・成田に借りているアパートから下関に駆けつけたのは、前日の夜。
実は、応援に行くかどうか、最後まで迷った。
「私が行くことで、集中できないのではないかしら…?」
だがそれもとり越し苦労だった。
妻の不安をよそに、ロープの外から見守る夫は、勝利に向かって、ただ1点だけを見つめていたのだ。
「いつも私が言っている、目の前のことに集中しなさい、って言葉。今日こそ実戦してくれたのね」とシェリーさん。
日本女子ツアーで1勝した経験を生かし、夫を支えてきた。
97年から2年半、夫のバッグを担ぎ、ともに転戦したこともある。
98年には、お腹に長男・チャーリー君がいたにもかかわらず、出産ぎりぎりまで、キャディを務めたこともあった。
「彼女はもう、5年以上も試合に出ていないけど、教えられることは山ほどあるんだよ」と、スメイルはいう。
特に、パッティングに関して、夫人の意見は貴重で、前週にもラインの見方にヒントをもらい、読みづらい下関の高麗グリーンを攻めきった。15番では、カラーから、約20メートルものバーディパットをど真ん中から沈め、勝利を決定づけた。シェリーさんの、アドバイスのおかげだった。
「もちろん、今日は18ホール、最後まで夫のプレーを見届けたわ。ドキドキしたか、ですって? とんでもない! 『どんどんいけいけ〜!』って、心の中で叫びまくってたわよ(笑)」
身長152センチの身体に、強いパワーを秘めたシェリーさん。
「彼女は、いつも僕に、大事なことを思い出せてくれる…。今日、彼女の前で勝てたことで、この勝利は、さらに意味のあるものになりました」
夫唱婦随でつかんだ、ビッグタイトルだった。