Tournament article
三井住友VISA太平洋マスターズ 2002
「今週は、今季“32試合目”のつもりで」
10月のウォルトディズニーワールドリゾートゴルフクラシックで、4位タイに食い込んで、今季米ツアーの初シード入りを決めた。
Qスクールからの挑戦で31試合に出場し、賞金ランクは92位。
今週、田中秀道が“凱旋帰国”だ。
久しぶりの日本ツアー。
まず第一声は、御殿場の高速グリーンへの、感嘆の言葉が飛び出す。
「こんな速いの、アメリカでも経験しなかったですよ! 本当に素晴らしい仕上がりです。これはマスターズに並ぶくらいじゃ、ないですか?!」
終始、明るい表情でインタビューに応えていた田中だが、『初シード入りおめでとう』の声には、一瞬、顔を曇らせる。
「結果的には目標を達成できて、それに関しては自分に100点をあげたいとは思う。だけど、ちゃんと今シーズンを締めくくれたかどうかといえば、そうじゃない。V争いはひとつも出来なかったし、プロとして許されない部分もたくさんあって。その内容には60点もあげられないと、思っていますから」
決して、満足して帰国したわけではないことを強調した。
今シーズン序盤は、苦しい日々が続いた。
たとえば激しい雨風、難コンディションの日、「今日は2アンダーでいい」と決めて、懸命にしのぎ上がってみると、上には7アンダーでホールアウトしている選手がいる。
「それっていったい何なのか…? なかなか理解できない自分がいました。マイペースを貫こうとしても、あまりの層の厚さに、焦りのほうが先にくる。回りを気にして、1打1打に集中できない。やるべきことを見失い、自分らしさなど、まったく持てる状態ではなかったんです」
と、振り返る。
結果の出ない日々。
体力的にもつらい時期があり、諦めかけたこともあったが、それでも1年間、なりふり構わず走り抜けた。
そんな経験の数々が、田中をいっそう謙虚にさせるのだ。
「今週、久しぶりの日本ツアー。余裕でやれるかって?とんでもない。トッププレーヤー揃いのこの大会で、気楽になんてできません。僕にとっては、今週も米ツアーと同じステップ。今季“32試合目”として、全力でやるつもりです」
今年の日本ツアー第1戦、今大会初日は「米ツアーでもNO.1といっていいスインガー」(田中)チャールズ・ハウェルと、トップアマの宮里優作君とのラウンド。
「気合いが、入りますね!」
本番を前に、この1年で逞しさが増した表情を、いっそう引き締めた。