Tournament article
マンダムルシードよみうりオープンゴルフトーナメント 2003
『これからまた、新たな夢を!』ツアー初制覇を達成した谷原秀人の次なる野望
本来なら、今週末はコースに来る予定はなかった。
だが前日、2日目の1番でOBを打つなど、ティショットに不安を抱える谷原が青山さんに電話を寄越して、「明日、来てくれませんか?」。
前日ホールアウト後の練習で「バックスイングで、左肩が突っ込んでいる。ここを押さえるように振っていきたい」と、自分なりに解決のヒントを見つけていた谷原だったが、それでも、自分ひとりでは決めかねていた。優勝争いに挑む前に、信頼できる人からの確信の言葉が欲しかったのだ。それがわかった青山さんは、きゅうきょ、東京の自宅から駆けつけたのだった。
朝の練習場で青山さんと話し合い、スタート前に、懸念事項を解消できた。これが大きかった。
その青山さんには最近になってずっと、「技術はついている。あとは精神面だね」と言われていた。
「その精神面も、今年は開幕から何度も良い位置でプレーしてきてその中で崩れたりした経験が、僕を強くしてくれたと思う。今日、優勝争いの後半にスコアを伸ばしていけるような攻めるプレーが出来たのは、それらの経験があったから」(谷原)。
恒例となっている米国フロリダ州でのオフ合宿では今年、青山さんのほかに、山坂元一・トレーナーを招いて、徹底的に、体を鍛えなおした。プロ野球の松坂大輔選手やスケートの清水宏保選手も見ているという山坂さんのトレーニング法は、「一度、体の全細胞を壊して新しく作り直すやり方」(谷原)。相当の負荷をかけて1分間エアロバイクをこぎつづけるなど、かなりハードなメニューだった。
「直後には意識が飛んでしまい、あとで歩くのもつらくなるほど。でも、そのおかげで体脂肪がかなり減ったし、自分では自覚がないけど、まわりの人たちから『“体幹”が、強くなったね』と言われるようになりました」。
昨シーズン終盤は、最後までギリギリの争いをしながら、結局、わずかの差で、初シード入りできなかった。その反省から、今年は特に積極的に心技体を磨くことに心を砕いてきた。その努力の末に勝ち取ったデビュー2年目のツアー初優勝は、「今年いちばんの目標だった。それが達成できたのだから、これからまた、新しい夢を作っていかなければ・・・」と谷原。
初日が濃霧と台風接近のために中止となり、今大会は54ホール競技となった。主催者のご厚意により、賞金は選手たちに全額支払われるが、賞金ランクへの加算は規定どおりに75%となる。この優勝で谷原は、全英オープン日本予選ランク6位に浮上したものの、金額的には厳しい状況といえるが、「それでも、せっかく見えてきたチャンス。最大限に生かしたい」。
次なる目標は、初のメジャー出場だ。優勝の余韻に浸る間もなく、谷原の心はすでに、次週の日本予選・最終戦『ミズノオープン』へと向いている。
写真=この日最終日のスタート前の練習場で。きゅうきょ、かけつけた青山さん(右端)にスイングチェックをしてもらい、谷原は自信を深めてコースに出て行ったのだった。