Tournament article
ゴルフ日本シリーズJTカップ 2004
2004年のキング誕生!!
プレー中の選手には長袖のポロシャツでも、暑くてたまらない。片山は、4番ティショットのあと、おもむろにはさみを取り出し、シャツの両袖を切り取ってしまった。
切りっぱなしの袖をはためかせ、賞金王へのカウントダウンが始まった。
逆転・キングをねらうY・E・ヤンが優勝争いをしていた。
追われる身のつらさ、プレッシャー。
歩くのも精一杯というほどの体調不良。
本当なら今大会には、ドクターストップがかかっていた。しかし2000年以来、自身2度目の賞金王は、昨年の今大会終了時から掲げていた目標のひとつ。
「勝ち星より価値があるもの。絶対に獲りたい」と、シーズン後半の10月からは、無理を承知でデビュー以来初めてという9連戦をこなしてきたのだ。
最後の最後に来てむざむざと、他人に譲り渡すわけにはいかない。
最終日は、気力を振り絞った。
それでも身体のつらさに負けて、萎えてしまいそうな気持ちはギャラリーの声援を借りた。
スタート前に「応援してください」との思いをこめて、片山自らの手で配った『ハッスル』の文字シール。
5番で4メートル、6番で1メートル、9番で3メートル。
バーディチャンスをねじ込むたびに「ハッスル、ハッスル!!」
片山のジェスチャーにあわせ、シールを胸に貼り付けたギャラリーの、大声援がこだました。
心強い援軍もあった。今季から用具契約を結ぶナイキのスタッフ総勢70人がコースにかけつけ、色とりどりのテンガロンハットをかぶって18ホール、ついて歩いてくれた。
たくさんの力に支えられながら、渾身の力を振り絞ってこの72ホールを回りきった。
今季最後の18番グリーンは、思わずその場に倒れこんでしまいそうだった。
痛みをこらえるような表情をして、東京よみうりの夕焼け空を仰いだ。
「これ以上、ないくらい追い込まれながら」もぎ取ったキングの座。
「…この終わり方は、試練だったのだと思う」と片山は言った。
二度限りではない。
「これから何年も、(賞金王を)続けていくために僕に与えられた試練」。
身も心も砕け散ってしまいそうなほどの苦しさをこらえ、戦い抜いたこの最終戦での記憶を忘れずに、2005年もさらなる進化をとげていくつもりだ。