Tournament article
三井住友VISA太平洋マスターズ 2005
矢野東(やのあずま)「1週、間違えちゃった」
最終日、すべてのゲームが終わり表彰式も済んだあと、チャンピオンと生徒たちが18番グリーンに集合し、記念撮影会が行われた。
チャンピオンブレザーを羽織った矢野がガッツポーズを取りながら近づいてきた。
と、たちまち黄色い歓声が起きた。
「・・・か、かっこいぃ〜!!」。
中には、両手を胸の前で合わせて感極まった風に、そこらを飛び跳ねている女子高生もいた。
ピタっとしたポロシャツに、ヒザから下にかけてメーカーのロゴが入った細身のカーゴパンツ。
バイザーにサングラスを引っ掛けて、耳にピアス、胸元にはシルバーのアクセサリー。
明るい茶色のメッシュを入れた髪。
これまでの、プロゴルファー像を覆す洗練されたスタイル。
デビュー当時から矢野は、この格好で通してきた。
年配のプロや関係者から、眉をひそめられたことはしょっちゅうだった。
しかし、矢野はガンとして変えなかった。
「ゴルフを、サッカー以上の人気スポーツに。若い人たちにももっともっと注目してもらい、ゴルフの面白さを知ってほしいから」。
批判されるたびに、そう繰り返したものだ。
最初は“奇抜”と言われたそのセンスも、今では同年代の選手たちのお手本的存在だ。
矢野にその日のコーディネイトを相談する者もいる。
“矢野東”というプロゴルファーの存在を知らずに観戦にやってきたギャラリーが、一目見ただけでファンになってしまった、という話もよく聞かれる。
「ああいう選手が活躍してくれたら、もっともっとコースに見に行くのに」という人もいる。
矢野自身、外見ばかりが取りざたされることはもちろん、本意ではなかった。
「批判の声は、成績で黙らせるしかない」。
その一心で内藤雄士コーチに指導を仰いだり、ハードなトレーニングに汗を流したり、努力を重ねたこの6年間だった。
本当は、今週の三井住友VISA太平洋マスターズに照準を合わしていた。
昨年9位。一昨年前に6位に入り、会場の太平洋クラブ御殿場コースは「大好きなコース。勝つならあそこと決めていたのに。1週、間違えちゃったかな」。
先週の優勝インタビューで笑顔を交えながら語ったが、それも今週、当初の予定どおり勝てば済むことだ。
「・・・ぜひ、狙っていきたいですね」。
2週連続優勝で、一気に人気を引き寄せる。