Tournament article
ダンロップフェニックストーナメント 2005
横尾要、世界一を脱帽させたしぶとさダンロップフェニックス最終日
「要! 次はイーグルで決めちゃえよ!」。
「・・・無理です。アップアップですよ」。
そう言い残してコースに出て行った横尾には、立山の次の言葉は聞こえていなかった。
「そうかな? 俺には余裕で戦っているようにも見えるんだけど・・・」。
4位タイにつけた2日目から、横尾は言い続けていた。
「ウッズは、僕らとは別のコースを回ってる」。
特に、18番パー5は560ヤードと距離があり、そこから視界が開けている300ヤード地点に飛ばして楽にグリーンを狙えるウッズに対して、「僕は断然に不利」(横尾)。
よりによって、プレーオフはその繰り返しで行われたのだから、立山につい弱音をはいた横尾の気持ちも分からないではないが、4ホールの激闘は、けっして本人が卑下するような内容ではなかった。
1ホール目こそパーで分けたが、2ホール目は手前右バンカーから第3打をピタリとつけてみせ、ピン位置が切り替えられた3ホール目も、バンカー淵の難しいライから刻んで、4メートルのイーグルチャンスにつけたウッズに負けじと残り130ヤードから、ピンに絡めた。
本戦でも16番、18番でバーディ。土壇場で追いついて、プレーオフに持ち込んだ横尾のプレーぶりに、「脱帽したよ」と、なかば呆れ気味に言ったのは、他でもないウッズだった。
優勝インタビューでも心底うんざりした顔で「正直、(プレーオフの)1ホール目に負けたと思った。今日は本当に長い1日。今回は、ストレスのたまる優勝だったよ」。
ウッズも思わずそう愚痴ったしぶとさで、最後まで食い下がったのだ。
4ホール目にバーディパットを外し、立山ほか応援してくれた家族や友人に「・・・すみません」と、頭を下げてまわっていた横尾のかたわらに、ウッズが静かに近寄ってきて、その手に何かを握らせた。
それは、丁寧に折りたたまれた白いグローブ。もちろん、ついさっきまでウッズが使っていたものだ。
激戦を戦いぬいた友情の証し。
手渡すと、ねぎらうように横尾の肩を抱いた。
破れはしたが、世界一のゴルファーにその存在を知らしめるに十分の好ゲームを繰り広げたのだ。