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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2007
ディフェンディングチャンピオンが2位タイ浮上専属キャディの藤室一平さんはこれがまさに“最終戦”
今大会をもってキャディ業を“廃業”する。来年から某製造メーカーのマレーシア駐在員として、新たな人生をスタートさせる。
初めての出会いは2001年だった。前年のファイナルQTで出場権を得て、シンが日本で本格参戦を始めた年だ。
3月、京都・立命館大の経営学部4年だった藤室さんはゴルフ部の仲間4人と開幕戦の東建コーポレーションカップにアルバイトに来た。そのとき担いだのがシンのバッグ。
4位に気をよくしたシンは「来週も頼むよ」と言った。卒業を間近に控え、進路に迷っていた藤室さんのキャディ人生の始まりだった。
シード落ちした2003年は、ロッカーで泣き崩れたシンをただ見下ろすしかなかった。何度も優勝のチャンスを迎えながら、大事な場面で自滅するシンを、叱り飛ばしたこともある。
どん底のときも、力を合わせて頑張ってきた7年間。
そんな2人にとって、最高の年になったのは昨シーズン。
日、米、欧、亜合わせて39試合に出場。うち、藤室さんがアシストしたのは35試合。ツアー初優勝から今大会での2週連続優勝を含む計4勝に貢献した。
世界各地で稼いだ賞金は軽く2億円を超えて、キャディ部門のMVPがあるとすれば「間違いなくイッペイ」とキャディ仲間が口を揃える大活躍だった。
その年4月に、8年ぶりの復活優勝をあげた欧州ツアー「ボルボチャイナオープン」でシンが言った言葉を、藤室さんは今も忘れない。
「今までよく待ってくれたね。ありがとう!」。
2人の絆が深まった瞬間だった。
今年は、インド人として初のマスターズにも出場。一緒に夢のオーガスタを味わった。
欧州ツアーを主戦場に戦いを続けてきたが、藤室さんが限界を感じたのは8月も過ぎたころだった。
慣れない環境。毎日のように国を超える旅。英語さえ通じない土地の転戦は思いのほか堪えた。
「ホームシックにかかってしまって・・・」。
一足先に帰国。
8年間交際を続けてきた真美さんとの結婚が決まったこともあり、キャディ生活にピリオドを打つことを決め、いよいよこの最終戦を迎えたのだった。
2日目を終えてシンは3アンダー4位タイ。
「イッペイの最終戦を連覇で飾るよ」と言ってくれるがいつもクールな藤室さんはこう思う。
「まさか、そんな出来過ぎたこと・・・」。
そう言って苦笑したが、大会はまだ折り返したばかり。首位と5打差は十分にチャンスがある。