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マンシングウェアオープンKSBカップ 2007

ツアー最年少の優勝スピーチ

女子プロの宮里藍さんが東北高校3年の18歳で、女子ツアー史上最年少の初優勝を上げたのは、石川君が小学6年生のときだった。

「テレビで見て感動した」。以来、石川君も、アマチュアのうちにツアー初優勝をあげることが目標になった。

主催者推薦を受けて、初のツアー参戦を果たした今大会が「その第一歩になるだろう」と考えていた。
「ここで、貴重な体験がたくさん出来るだろう」と。「勉強」にこそなれど、もちろん優勝できるとは夢にも思っていなかった。

だから、その瞬間「マジで? マジで?」と、連発した。
「まだ、僕には早すぎる」と、いうのが本音だった。
優勝は、「藍さんと同じ、高校3年生くらいで」と、考えていた。
「・・・それだと、優勝スピーチも上手に受け答えができる」と、思ったからだ。

いざ大勢の前で初めてマイクを握った石川君は、「頭の悪いのが出てしまって恥ずかしかった。頭の良い人なら、もっと上手く答えられるのに・・・」と反省を口にしたが、15歳の飾らない率直な優勝スピーチは、どんな立派な文言よりも人々の心を打ったに違いない。

長女で石川君の妹の葉子ちゃん(10歳)と、次男の航くん(7歳)を実家の母に預け、会場に駆けつけた父・勝美さんは、息子の晴れ姿にしみじみと言った。
「以前、運動会で実行委員をしていたときに、成功したと言って、泣いていたのと同じ顔をしています」。
実は、息子の初めてのツアー参戦は、ちょっぴり不安だった。
「ヘタなのは当たり前。せめて、プロのみなさんのジャマにならないように」とだけ言い聞かせた。
「あとは、すがすがしいプレーを心がけ、予選を通れれば上出来だ、と」。

それが一転、ツアー最年少優勝に、母・由紀子さんは「ウソでしょ、信じられない」と、何度も何度も繰り返した。

小さいころは喘息持ちで、体も弱かった。スイミングで克服し、中学時代は陸上部の短距離走で活躍した。部活動が終わると、今度は自宅に帰って父から教わったゴルフに熱中した。
全国中学ゴルフ選手権で優勝したのは地元・埼玉の松伏第二中2年の時。次第に頭角をあらわして、ジュニアの試合で次々と好成績を修めていった。

この春、都内の杉並学院高校に進学してから、身長がまた4センチ伸びて171センチ、体重は54キロ。
知らぬ間に、たくましく育っていく息子に目を細めていたものだが、「まさか、こんなことになるなんて・・・」。

最終日に駆けつけたギャラリーは1万811人。しかし物怖じひとつせず、むしろ大ギャラリーと一体となって、ゴルフを心から楽しむその姿に「自分の子を見ている気がしなかった」と、由紀子さんはいう。

もし、このあとプロ転向を宣言すれば、約3年間のシード権が与えられる。タイガー・ウッズを見て「プロゴルファーになりたい」と息子が言ったのは小3年のとき。
その夢に一歩大きく近づいたが、何はさておき、誉めてやりたいのはもっと別のことだった。
涙ながらに恩人に、感謝の気持ちを伝えたスピーチは「遼らしくて良かった」と、勝美さんは言った。
「すがすがしくて、微笑ましかった」と、嬉しそうに微笑んだ。

このあとすぐ、中間テストを控えている。
「勉強はいつも、一夜漬け」と笑うが、勝美さんが目指す「文武両道」が、石川君自身の目標でもある。自宅から2時間かけて、学校に通う。

プロ転向は、まだ考えていない、という。
「大学に行くかもしれないし、留学もしてみたいし」と無限に広がる将来設計はさておいて、「また、明日から勉強です。早くクラスのみんなに会いたい」と、最後は高校生らしいコメントで優勝インタビューを締めくくった石川君。
ちなみに、好きな科目は英語で、「嫌いなのは数学」だそうだ。

写真=この日最終日に着たズボンは、前日土曜日のホールアウト後に、ご両親と気分転換に買い物に出かけた岡山市内のデパートで購入。「試着して、かっこい〜じゃん!と思ったのを選んだだけ。特別な意図はない」という真っ赤なパンツは偶然にも、大会主催の株式会社デサントの田尻邦夫・代表取締役社長より受け取った真紅のチャンピオンズジャケットとぴったり合った。

<ミニ知識>
石川君の15歳8ヶ月の優勝は、1977年の日本オープンで、スペインのセベ・バレステロスが作った20歳と7ヶ月の日本ツアー最年少記録を大きく塗り替えるものでした。
また、男子ツアーでのアマチュア優勝は倉本昌弘が25歳のときに達成した80年の中四国オープン以来。
ちなみに米ツアーの最年少優勝記録は、1911年の全米オープンで米国のジョニー・マクダーモットがマークした19歳と10ヶ月。
日本女子ツアーの最年少優勝記録は、宮里藍がアマチュア時代の宮城・東北高校3年の2003年に記録した18歳と101日でした。
  • 左から父・勝美さん、石川くん、母・由紀子さん。
  • 初めての優勝インタビューで、涙ながらに「幸せです」と・・・

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