Tournament article
フジサンケイクラシック 2007
石川遼くん「優勝を狙っていくしかない」
それでも律儀に説明をはじめた。
「1番はティショットが思い切り左にフックしてしまったのが、木に当ってバンカーに落ちて、そこから残り122ヤードはピッチングで右6メートルについて、それを1メートルショートして・・・」。
ティショットが木に当ったのは「相当ラッキーでした」と笑った。
このパーパットが結局、この日最後の1打となった。2番のティショットを打つ直前に競技は一時中断。そのあと一度も再開されないまま、第3ラウンドのサスペンデッドが決まったからだ。
残りの17ホールは2日(日)の8時より再開。競技は54ホールに短縮される。
つまり、首位と3打差6位タイのまま最終日を迎えることになる。
「いまは、とにかく1打1打が大きな経験になる。そのためにも今日は最後まで回りたかった」と不満を漏らす一方で、「3打差で迎えられる嬉しさと緊張感がある」と本音もチラリ。
ムービングデーと言われるのが大会3日目。
それまでの順位がガラリと入れ替わったり、優勝争いのキーになるのがこの日だ。
朝はスタート前から他の選手のスコアが気になった。
「やっぱり、プロの人はスコアを伸ばしてすごいな、と思っていた」。
石川くんもそのままプレーを続けていたら、さらに首位との差を縮められた可能性ももちろんあるが、もしその逆だったなら・・・。
「順位が変わらず最終日を迎えられることは、運が良かったとしか言いようがない」。
ティショットはあいかわらず不安定だが、いまさらジタバタしない。
「おまえにはプロのように、100ヤード手前には刻む技術はない。だから、1メートルでもピンに近く打て」とは父・勝美さんの教えだ。
どんな場面でも、ドライバーを躊躇なく振り抜く攻めのゴルフが身上だ。
「明日も、真っ直ぐ飛ばそうとは思わない。思い切り振り切って、持っているドライバーの技術を出し切りたい」と、言い切った。
ツアーで2度目の頂点も、その姿勢を貫いてこそ。
同じ組の野上貴夫と井上忠久にも、声を揃えて言われた。
「あのときと、同じような感じじゃない?」。
史上最年少優勝を達成した5月のマンシングウェアオープンKSBカップは、強風のため初日が中止。
あのときは最終日に2ラウンドを行い、72ホールを消化するタフな条件ではあったがどこか似たような展開には本人の期待も高まる。
「プロのみなさんも6位なら、優勝を狙えると思っているでしょう。そんなみなさんのジャマはしたくない。そのためにも、僕もプロと同じ気持ちで優勝を狙っていくしかない。17ホール終わった瞬間に倒れちゃうくらい、自分のものを出しきりたい」。
行き届いたマナーや挨拶だけではない。真剣勝負をすることも、石川くんにはプロへの礼儀のうちなのだ。