Tournament article
フジサンケイクラシック 2007
石川遼くんは15位タイでロゥエストアマチュア賞受賞
「あのときは、すべて思い通りのプレーができて、ゾーンに入っちゃったら怖いんだな、と。いま、もう一度あのコースをプレーしたら、きっと相当難しい。でもあのときは、最後まで難しいと感じることもなくプレーができた。まぐれだったんです」。
しかし、あれから3ヶ月。今回のツアー2戦目は「まぐれではなく、自分の実力でプレーができた」と胸を張る。
ピンチもあった。経験したことのないような重圧も。
それらをことごとく跳ねのけて、1アンダーで予選を突破。
最終日には、3打差の優勝争いに加わった。
今回、2度目の挑戦に点数をつけるとしたら「92点」。
足りなかった8点は最終日に、ぶり返したプレッシャーのために精彩を欠いた小技の分だ。
サスペンデッドとなった前日3日目の第3ラウンドの続きは2番ホールからのスタート。
最初に迎えたピン奥2メートルのバーディチャンスは入れたい、と思うほどに「手が震えて動かなかった。ただの“下りスライス”とは違ってた」と、振り返る。
それまでことごとく寄せてきたアプローチも「インパクトの直前で力が入り、距離感が合わなかった」。
ショットの前に繰り返した深呼吸は、ロープ際の大ギャラリーにもその吐息が聞こえるほどだった。
大事なパット打つ前にサンバイザーを両手で挟み、自ら視界をさえぎったのは冷静さを取り戻すためだ。
「ツイてる場面もあったけど、苦しんだ場面もあった。(ショットの)精度を要求される場面があり、それを切り抜けた場面もあった」。
どんなシーンも今の自分のありったけの力を出して、全力で戦い抜いた。
330ヤードのビッグドライブを披露したのは568ヤードの17番パー5。
グリーン手前のカラーから1.5メートルのバーディパットは「ギャラリーの人が『最後に取れ!』と」。
声援に応えてど真ん中から決めた。
通算1オーバーの15位タイは「僕ひとりの力ではありません。ギャラリーのみなさんが僕の1打1打を見守ってくださったから」。
18番でパーパットを決めて、大観衆に向かって何度も手を振る。笑顔でつぶやく。
「ありがとう・・・!」。
アマチュアとしてただひとり決勝ラウンドに進み、ロゥエストアマチュア(ベストアマチュア)賞を獲得して臨んだ表彰式。
15歳らしからぬスピーチに、居合わせた立山光広が疑いの目を向ける。
「実は、手に書いてあるんじゃない?」とのジョークに「え? 書いてないですよ」と、大真面目に広げてみせた手はこの4日間、精一杯に戦い抜いたという自信と手ごたえを確かに掴んだ。
「優勝はものすごく遠かったけど、今回の214ストローク。すべてのショットに緊張感を持って打てていた。ここまで頑張れた自分を誉めてあげたい」。
そんな石川くんに、チャンピオンからご褒美だ。
最後の記念撮影で、谷原秀人が「替えっこしよう」。
ロゥアマの盾と交換で受け取ったのは、真鍮製の優勝杯。
チャンピオンさながらに、満面の笑顔で杯を掲げる石川くんに谷原が合格点。
「今週、遼くんは優勝に匹敵するほど頑張った」。
15歳、充実の夏が終わった。