Tournament article
マイナビABCチャンピオンシップ 2008
深堀圭一郎、17歳の挑戦も「受けて立つ」
「深堀さんは、たとえミスをしても絶対に当たらない。どんなときもサービス精神を忘れず、ゴルファーのお手本のような人。あれこそが紳士。本当に尊敬しています」。
あとから伝え聞いた本人は「いい子だねぇ」と照れ笑いを浮かべたが、本音を言うなら「今はティグラウンドに行きたくないくらいに苦しい・・・」。
しかし、自分からは決して弱音は吐かない。むしろ笑顔さえ浮かべて舞台に上がる。
「見に来てくださるお客さんを裏切りたくない」。ただその一心からだ。
コースへの苦手意識に、過剰反応しているせいだろうか。
ティショットが曲がりに曲がる。
それは、ツアーきってのショットメーカーにしては珍しいほどの荒れようで、この日3日目もスタートから綱渡りのようなゴルフが続いた。
1番、2番で立て続けに大きく曲げながら、パーパットをしのぎにしのいだ。
この日のフェアウェイキープはわずか5ホールという惨状に、アプローチとパットの名手は「曲がっている部分以外の力を出してやるしかない」。
しかし、その信念さえも揺らぎそうな高速グリーンが待ち受ける。
少しでも油断すれば、あっという間に奥のラフに食われる。
後半の5ホールで3つのボギーに、一時6打差の独走態勢はあっという間に崩れ去った。
結局、2位と1打差。
石川とは3打差にも「明日は楽しみな展開になる」と、依然としてこの男は笑ってみせるのだ。
いまもっとも勢いのある17歳との最終日最終組に「運営の方にお願いしたんですよ、明日はギャラリー整理のスタッフを増やしてください、って。きっとたくさんのお客さんに、曲げて当てたら大変なんでね。“球曲げ部隊”を配置しないと」。
自虐的なジョークを交えてさりげなく観客にも配慮しながら、やっぱりニコニコと笑うのだ。
本来なら「とても独走できるゴルフじゃない」。
3年ぶりの優勝も「狙うなんて大きなことは言えない、でも・・・」。
先月9日に40歳。
不惑の男は「半分以上も年下」の選手の挑戦も「気持ちよく受けて立ちたい。お客さんが喜ぶゴルフを見せたい」。
その信念は揺らがない。